医療費「月千万円以上」過去最多の484件、昨年度
医療機関での高額な治療が増え続けている。健康保険組合連合会(健保連)の集計によると、患者1人あたりの医療費が1カ月で千万円以上だった例が、2016年度は484件となった。15年度に比べて件数は3割以上増え、過去最多になった。1カ月で1億円を超えた治療も2件あった。医療の技術が高度になっていることが背景にあり、財政負担と両立できるかが課題だ。
健保連によると、フォンウィルブランド病と呼ばれる血液疾患の治療が月約1億700万円で最も高額だった。2番目は血友病で約1億200万円。いずれも症状の悪化を防ぐために高額な治療薬を使う。月1億円を超える医療費が記録されたのは11年度以来。
上位100件を疾患別に見ると、循環器系が41件で最も多く、血液の34件、先天性が8件が続く。千万円以上の件数は06年度で116件だったため、10年で約4倍に増えた。C型肝炎の治療薬や補助人工心臓など高額な治療法や医療機器の保険適用が相次いだことが背景にある。
日本の医療保険制度では患者の負担が一定額を超えると、超えた分を保険でまかなう「高額療養費制度」がある。患者負担が抑えられる一方で、保険や公費などをあわせた医療費はこの10年で約9兆円増えている。
厚生労働省は医療費の膨張を受けて、医薬品や医療機器の費用対効果を価格に反映するための議論を始めている。効果の高い薬でも費用があまりにも高い場合、薬価を下げる検討に入る。他方、製薬会社などの開発への意欲をそぐ懸念も指摘されており、慎重な議論が求められそうだ。
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