送配電網の使用料決定、新電力「なお高止まり」
経済産業省の電力取引監視等委員会は11日、電力大手が所有する送配電網の使用料(託送料金)を決めた。大手各社の申請した料金より引き下げたが、借り手となる新規事業者(新電力)からは「依然として高い」との声が上がる。肝となるコストが小幅修正にとどまったことで、来年4月の全面自由化後も電気料金が高止まりする懸念もある。
「想定より東京電力の託送料金が高い」。関東地方で参入を検討する新電力幹部は憤る。消費者の電気料金のうち、電線や電柱の維持費などで構成する託送料金は3~4割を占める。送電網を持つ電力会社に支払う託送料金が高いままだと、電気料金を引き下げにくくなるためだ。
電力大手10社は今夏、家庭向けで1キロワット時あたりの託送料金を7~11円台と申請した。東電は8.61円、関西電力は7.86円、中部電力は9.03円――などだ。これを月額約8000円の電気料金にならすと託送料金は約2500円。電力監視委の有識者がこの数字の妥当性を調べた。
事故で発電所が停止した場合に備え電力大手が予備的に抱える設備などにかかる「調整力コスト」が焦点となった。「電力大手の余分な費用が託送料金に上乗せされている」との見方に対し、電力大手は安定供給のためには必要と主張。「双方のバランスに苦慮した」(有識者)結果、申請時より東電が0.04円、関電は0.05円などと小幅減額にとどまった。
来春以降に家庭部門への参入を予定して経済産業省への登録を済ませた新規事業者は現時点で約30社。「申請時より若干下がると思っていたので想定の範囲内だ」(東京急行電鉄の子会社)との冷静な受け止めもある。ただ「一般的に託送料金が下がれば新規参入しやすい」(有識者の座長を務めた安念潤司中央大法科大学院教授)との見方もあり、新規参入組に逆風が吹けば事業者間の料金競争は低調になりかねない。
2011年3月の東京電力福島第1原発事故の原発停止などで電力業界は混乱し、家庭の電気料金は約2割上昇した。ガス会社など新規事業者は年内にも今回の託送料金に基づいて電気料金を公表する予定で、消費者への訴求力を持った新規事業者の料金設定が次の焦点になりそうだ。
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