農産物輸出、伸び鈍化 1~6月2%増止まり

2016/8/10 19:57
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農林水産物や食品の輸出テンポが鈍っている。農林水産省が10日発表した2016年1~6月の輸出額は前年同期比2%増にとどまった。主力海産物の水揚げ量減や円高が響いた。牛肉や果物の一部は好調で、日本産品の人気は根強いとの見方もある。

安倍政権は20年に輸出額を1兆円に引き上げる目標を1年前倒しで達成することを目指している。15年の7452億円から3割超の上積みが必要で、このままのペースでは達成は厳しい状況だ。

農産物輸出は15年まで3年連続で過去最高を更新し、15年1~6月期の伸びは25%増に上った。ここへきて勢いが落ちた主因は、品目別で最多のホタテが不漁のため28%減の218億円に沈んだことだ。

ホタテの生産・輸出を手掛ける寺本商店(北海道湧別町)は「水揚げ量が例年の7割に落ちた」と話す。同社は輸出比率が6~7割と高く、水揚げ不振に直撃された。

輸出先を国・地域別にみると香港、米国、台湾の順だった。年始から20円近く円高が進み、「輸出採算が悪化した」(農林中金総合研究所の藤野信之研究員)面も大きい。

環太平洋経済連携協定(TPP)が発効すれば日米など加盟12カ国間の域内関税はなくなるが、それだけでは目標達成前倒しは難しいとの見方がある。現場からは「非関税障壁」の存在を指摘する声が出ている。

宮城県漁業協同組合(宮城県石巻市)は最近、刺し身や酢の物に使うホヤの大量処分を決めた。東京電力福島第1原子力発電所事故で主要な販売先だった韓国による輸入禁止措置の影響が長引いているためだ。

10日会見した全国農業協同組合中央会(JA全中)の金井健常務理事は、米国市場についても「植物の検疫条件が厳しく生鮮品の受け入れが厳しい」と説明。両政府間の検疫交渉を通じた事態打開に期待を示した。

海外で日本産品の人気が衰えているわけではない。牛肉は11%増の50億円、リンゴは62億円と18%増えた。イオン系のミニストップが昨年末にベトナムの店舗で青森産リンゴを試験販売したところ、即日完売した。宮下直行社長は「商品がよければ高くても売れる」と話す。

農水省はこのほど公表した経済対策の中に、輸出向け流通・加工施設の整備構想を盛り込んだ。産業界とのパイプが太い経済産業省出身者を輸出担当局のトップに迎えたのは6月のこと。農産物輸出の底上げに向け"攻め"の政策を打ち出せるかも試されている。

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