2019年9月17日(火)

アベノミクス、なるか再起動 景気下支え正念場

2016/7/11 3:32
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参院選での与党勝利を受け、経済・財政運営ではアベノミクスの巻き直しが課題になる。企業業績や雇用改善をけん引してきた円安・株高の流れが英国の欧州連合(EU)離脱決定などで逆回転しつつあり、景気の下支えは正念場だ。働き方改革など成長底上げに向けた課題も山積している。

■経済対策が焦点

当面の焦点は秋の経済対策だ。政府内では対策規模が5兆~10兆円の大型になるとの観測がある。中心は公共事業だ。熊本地震を受けた防災や観光関連のインフラ整備などに1兆~2兆円が投じられる可能性がある。

低迷する消費への喚起策として「商品券」を検討する見通しだ。保育や介護といった一億総活躍社会の実現に向けた施策や、人工知能(AI)などの成長戦略にも重点的に予算を付ける方向で調整が進みそうだ。

安倍政権は12年に公共事業を中心とした13兆円強の大型補正予算を組んだが、13~15年度は3兆~5兆円に抑えた。安倍晋三首相は低調な景気のてこ入れへ「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と表明。英EU離脱決定など世界経済の不確実性が高まっていることもあり、財政回帰の動きを強めている。

野村証券の予測では、経済対策も反映させた場合の16年度の実質成長率は0.8%、17年度が0.9%の見通し。安倍政権が目指す2%成長には遠い。クレディ・スイス証券の白川浩道氏は「建設業は現状でも80万人の人手不足に陥っているとみられ、経済対策の効果は限定的だ」とみる。

■「脱時間給」棚ざらし

失業率や有効求人倍率のように3年半で大きく改善したものがある一方で、個人消費は低迷が続き、企業の生産活動も横ばいとさえない。一時的な刺激策では景気回復は長続きせず、持続成長に向けた手を打てるかが参院選後の大きな課題だ。

焦点の一つである働き方改革は遅れが目立つ。例えば、時間ではなく成果に賃金を払う「脱時間給制度」を柱とした労働基準法改正案。野党の反対が根強く、2年にわたって通常国会での成立が見送られている。臨時国会での成立も見通せない状況だ。

与党が参院選公約に盛り込んだ、同じ仕事には同じ賃金を支払う同一労働同一賃金はこれから具体策の検討が本格化する。最低賃金の引き上げにも取り組み、非正規労働者の待遇を改善する。

こうした改革案だけでは人手不足にどのように対応するかや、成長産業への労働力の分配をどう実現するかといった視点に欠け、力不足の感は否めない。

■農業の自由化カギ

成長戦略の柱をなす環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案の成立は、秋の臨時国会の最大のテーマ。TPPをテコに「攻めの農業」を実現できるかにも産業界の関心は高い。

三菱総合研究所の武田洋子氏は、「農業分野に企業を参入させる仕組みや外国企業が日本に投資しやすくする環境を整えて、成長を底上げする必要がある」と指摘する。

ただ、米大統領候補の民主党のクリントン氏、共和党のトランプ氏がそろってTPPに反対の立場を鮮明にしているのが大きな不安材料だ。

日本政府はできるだけ早く承認案と関連法案を成立させたい考え。オバマ政権中に承認できなければ、次期政権が加盟国に再交渉を求める可能性もある。

参院選前に首相は消費増税の再延期を決めた。本来は消費税率10%時に実施するはずだった政策を8%のままでも一部先行実施するとしており、年末の予算編成で取り扱いが焦点になる。

具体的には低年金者への年6万円の給付金、年金受給資格の25年から10年への短縮、低所得者の介護保険料の軽減などだ。

年金充実策について首相は、公明党の強い意向を踏まえ前向きな姿勢で応じている。財源確保策も含め政府内で検討が進む見通しだ。安定財源を確保しないまま給付が先行すれば、安倍政権のもう一つの柱である財政健全化が遠のくことになる。

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