都心―羽田・成田のアクセス強化 国交省が鉄道整備指針
国土交通省は7日、今後15年間の東京圏の鉄道整備の指針をまとめた。羽田と成田の両空港をむすぶ路線や羽田アクセス線を新設し、都心から羽田空港や成田空港に行きやすくする。つくばエクスプレスの延伸などを含む24のプロジェクトについて必要性を認め、財源の確保といった課題を示した。国際都市としての魅力を高め、訪日客の増加につなげる。
国交相の諮問機関である交通政策審議会が答申案をまとめた。
国交省はおおむね15年ごとに東京圏の鉄道網のあり方を示しており、今回は2030年を念頭に置いた。東京圏の鉄道需要は高い水準で推移すると推計。国際競争力の強化や混雑緩和、まちづくりとの連携などを考慮して、個別のプロジェクトを評価した。
競争力強化に向けては8つの事業をあげた。
利用者数が増えている成田・羽田両空港と都心を結ぶ路線に力点を置いたのが特徴だ。アジアの主要国は空港と都市のアクセス強化に動いており、空港への行きやすさは国際都市の魅力に直結するためだ。
都心直結線は都心の地下にトンネルを掘り、京浜急行電鉄の泉岳寺駅と京成電鉄の押上駅をつなぐ構想だ。羽田・成田間の所要時間が1時間以内になる可能性がある。羽田アクセス線は東日本旅客鉄道(JR東日本)が検討する都心と羽田を結ぶ新線。国交省の方針を受けてJR東日本は「実現に向けて関係各所との協議・調整を進めていく」とコメントした。
東京急行電鉄蒲田駅と京急蒲田駅をつなぐ新空港線(蒲蒲線)は大田区などが提唱する。実現すれば新宿や渋谷、池袋などから羽田に行きやすくなる。大田区は「事業実現に向けて大きな後押しになる」(松原忠義区長)と受け止めている。
地域の成長のためのネットワーク拡充も掲げ、16の事業をあげた。大江戸線や京葉線の延伸に加え、混雑がめだつ京王線や小田急線の複々線化も盛り込んだ。
前回00年の答申では「開業が適当」「整備着手が適当」「今後検討」という3つの評価に分け、全体の3割程度が実現した。今回は格付けを見送ったため、意義があるとされた事業でも、すべて実現するとは限らない。答申案も事業によって「検討熟度が低い」「採算性に課題がある」などと問題点を指摘した。
都市鉄道は国、地方自治体、事業者が費用の3分の1ずつを負担する枠組みが多い。どの事業でも費用負担の議論は煮詰まっているとはいえないのが現状だ。答申案をまとめた家田仁・政策研究大学院大学教授は「どのプロジェクトもどんどんやれという時代ではない。採算や需要などを精査して、慎重に見極めなければいけない」と話す。