日ロ首脳、対北朝鮮「緊密に連携」 圧力強化では溝
【ウラジオストク=恩地洋介】安倍晋三首相は7日、訪問先のロシア・ウラジオストクでプーチン大統領と会談した。北朝鮮の核・ミサイル開発は地域の安定への深刻な脅威だとの認識で一致し、首相は「最大限の圧力が必要だ」との考えを伝えた。国連安全保障理事会の場を含め緊密に連携することを申し合わせたが、プーチン氏は対話重視の姿勢を示した。

両首脳の会談は第1次政権から通算して19回目で直接の会談は今年に入り3回目。河野太郎外相や世耕弘成ロシア経済分野協力担当相が同席し、通訳だけを交えた会談も20分間行った。
首相は会談の冒頭「北朝鮮の問題を含め地域の課題について、地域の平和と安定のために話し合いたい」と強調。両首脳は北朝鮮は朝鮮半島や地域の安定の深刻な脅威であり、3日の核実験はグローバルな核不拡散体制への重大な挑戦だとの認識を共有した。日ロの緊密な連携も確認した。
首相は北朝鮮に最大限の圧力を加える必要があるとの認識をプーチン氏に伝えた。国連安保理で議論が始まる石油の全面禁輸など北朝鮮への追加制裁決議の実現に協力を求めたもようだ。ロシアは北朝鮮に強い影響力を持つうえ、国連安保理の常任理事国であり、決議の採択にはロシアの協力が不可欠だ。
首相は会談後の共同記者発表で「北朝鮮がこのような道を進んでいけば明るい未来はない。このことをわからせて北朝鮮の政策を変える必要がある」と強調。プーチン氏も「世界に脅威をもたらしている」と語った。
プーチン氏は一方で「北朝鮮の問題は政治的な手段でのみ解決が可能だ。関係者全てが対話に参加することが必要だ」と指摘。「中国とロシアのロードマップに問題の解決が示されている」とも語った。中ロは北朝鮮の核・ミサイル開発と米韓軍事演習の同時凍結を求めており、北朝鮮への圧力強化を巡り温度差も浮き彫りになった。
プーチン氏は6日に韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談した際も石油禁輸に関し「病院など民間に被害を与えることを憂慮している」と慎重姿勢を示した。
北方領土問題を巡っては、北方四島での共同経済活動について協議。観光ツアーや養殖など5項目を優先事業とし、実現に向けた局長級の作業部会を置く方針で合意した。日ロ両政府が2016年に合意した8項目の対ロ経済協力の具体化では、政府や地方自治体、民間企業間で新たに30を超す合意文書を交わした。9月下旬に北方領土の元島民の空路墓参を実施することも申し合わせた。
両首脳は11月にベトナムで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に改めて会談することで合意。プーチン氏は来年5月にロシアのサンクトペテルブルクで開く経済フォーラムに首相を招待し、首相は受け入れた。