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日ロ首脳、5項目で経済協力 北方四島で養殖など

【ウラジオストク=恩地洋介、田中孝幸】日ロ両政府は7日の首脳会談で、北方四島で実施する共同経済活動の第1弾とする事業を選んだ。海産物の共同養殖やクルーズ船を使った観光など5事業の早期実現へ協議を進める。互いに主張する主権を害さない「特別な制度」をどう作るかでは、両国の思惑はすれ違う。事業実現へ局長級の作業部会を設けるが、実施のメドは立っていない。

安倍晋三首相は会談で「平和条約締結という歴史的課題の解決のため、北方領土での共同経済活動などを協力して進めたい」とプーチン大統領に呼びかけた。両政府は6月末に北方四島に現地視察団を派遣し、需要の高さや実現性の観点から優先して取り組む事業の絞り込みを進めてきた。

7日の会談では(1)海産物の共同養殖(2)温室野菜の栽培(3)北方領土のツアー(4)風力発電の導入(5)ゴミの削減対策――の5事業で合意。10月初めに再び現地調査することで一致した。2つの局長級の作業部会を設け、具体的な事業内容と、事業に従事する日本人が北方四島を訪れるための枠組みをそれぞれ検討する。

会談では、歯舞群島にある貝殻島の灯台改修を「双方の法的立場を害さない形」で検討を進めることも決めた。

なかでも観光分野は、手つかずの自然景観に加え、色丹島などには日本の元島民が暮らしていた当時の雰囲気が残るなど日本人の観光ニーズが大きいと判断。まず日本人観光客向けの日帰りのクルーズ船ツアーを実現させる。ロシア側と協力し、北海道を拠点とする企業が北方四島の観光開発を手掛ける構想もある。

養殖事業は北方四島の周辺海域で適しているとされるウニやホタテなどを念頭におく。北海道根室市の漁業者の関心が高く、北方領土を拠点とするロシアの漁業会社との共同事業となりそうだ。

今後の課題は、事業実施の前提となる特別な法的枠組みをどう作るかだ。互いに主張する主権を害さないことを条件に話し合いを進める。日ロ双方が対等な立場で参画する公社を設け、事業運営を進める案もあるが「交渉の俎上(そじょう)には載っていない」(外務省幹部)という。

日ロ双方の思惑も食い違う。日本側は人やモノの往来を活発にする事業を進め、共同経済活動を単なる経済協力に終わらせず領土交渉への弾みにできればともくろむ。

プーチン政権は当初、日本が求めた北方領土での共同経済活動に応じれば、日本からの投資が4島だけでなく極東全域に広がると期待した。

ただ、これまで両国の官民で動き出した具体的な事業や日本の投資規模は「中国の10分の1の規模」(ロシア政府筋)にとどまる。タス通信によると、トルトネフ副首相(極東担当)は日本の経済協力について「極東では何も実現していない」といらだちを示した。

ロシア政府内では共同経済活動への関心も薄れつつある。前提となる日ロ双方の法的立場を害さない「特別な制度」づくりでは、日本側の主張への配慮を余儀なくされる。保守勢力からの突き上げを恐れる外務省は、協議を引き延ばす姿勢をみせはじめている。

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