日米地位協定、「軍属」範囲を厳格化

2016/7/5 11:32
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岸田文雄外相と中谷元・防衛相は5日午前、都内の外務省飯倉公館で、ケネディ駐日米大使、ドーラン在日米軍司令官と会談し、沖縄県での米軍属による女性暴行殺害事件を受けた対策で合意した。日米地位協定で保護される軍属の範囲を明確に定め、実質的に対象を狭める。日本側が裁判できる余地を広げ、沖縄に配慮する。

ケネディ駐日米国大使(左から2人目)、ドーラン在日米軍司令官(同3人目)と会談する、岸田外相(右から2人目)、中谷防衛相(同3人目)=5日午前、東京都港区

地位協定は軍属について米国民の文民で「日本国にある米軍に雇用され、これに勤務し、これに随伴するもの」とのみ規定。「随伴するもの」の範囲は曖昧で事実上、米側の解釈で決めている。軍属になれば、公務中の犯罪は米側が優先的に裁判権を持つ。

日米両政府は共同文書を発表し、軍属の範囲を例示。(1)米政府予算で雇用された文民(2)米軍の船舶、航空機の乗組員(3)米軍の公式目的で滞在する米政府の雇用者(4)米軍と契約する民間企業の技術アドバイザーやコンサルタント――などとした。

今回の容疑者は米軍と契約する民間の従業員だった。新規定では民間業者の従業員のうち、軍属に認定するのは「高度な技術や知識を持ち、米軍の任務に不可欠な者」に限定した。外相は新規定では今回の容疑者は軍属から外れるとし「軍属の範囲が縮小されるのは間違いない」と記者団に強調。ケネディ大使は会談で「基地周辺の地と日本国民の信頼と友情にふさわしくあるよう努める」と述べた。

軍属になる技術アドバイザーやコンサルタントがどんな職能か具体的に定める作業に日本政府も関与する。日本に在留資格を持つ場合は軍属から除外し、軍属の適格性は定期的に見直す。細部を数カ月で詰め、地位協定そのものは変えず、軍属に関する新たな文書をつくる。

外相は「地位協定の運用改善にとどまらない、一歩進んだ法的拘束力がある政府間文書をめざしている」と記者団に述べた。地位協定を補足する協定には、米軍基地内の現地調査に関する「環境補足協定」がある。

米側が日本側に伝えている米軍属の人数は2013年3月末時点で全国に5203人、うち沖縄に1885人。軍属の対象を従来よりも限定できれば、日本の司法手続きを取れるケースが増える。ただ、事件後も米兵の飲酒運転などが相次いでおり、今回の合意による犯罪抑止の効果は不透明との指摘がある。

米軍人・軍属の教育・訓練強化でも合意した。米政府が地元の意見を聞きながら、日本国内の法令順守や罰則などを徹底する教育・研修課程を実施し、地位協定の保護を受ける関係者は研修の受講を義務付ける。家族についても受講を奨励する。

地位協定は問題があれば、外務省北米局長と在日米軍副司令官が代表を務める日米合同委員会の合意で運用を改善してきた。今回は閣僚と駐日米大使によるハイレベルでの合意とした。沖縄県内で根強い「地位協定の抜本的見直し」を求める声を踏まえると、日米合同委合意だけでは理解が得られないと判断した。

米軍属が起訴された今回の女性暴行殺人事件は、公務外の犯罪で身柄が日本側にあったため、地位協定が沖縄県警の捜査の障害になる場面はなかった。ただ沖縄県内では反基地感情の高まりを踏まえ、日米で協議していた。日本政府としては10日投開票の参院選を前に再発防止策をまとめる必要があると判断し、交渉を急いだ。

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