成長底上げへ政策総動員 G20開幕
反保護主義言及相次ぐ
【杭州=木原雄士】日米欧に新興国を加えた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が4日、中国浙江省の杭州で開幕した。初日の討議では世界経済の下振れリスクが高まっているとの認識で一致し、成長の底上げへ機動的な財政措置を含めあらゆる政策を総動員する方針を確認した。保護主義に反対する声が相次いだほか、首脳宣言に為替安定の重要性を改めて盛り込む方向が固まった。
日本から安倍晋三首相と麻生太郎財務相が出席した。5日に首脳宣言を採択して閉幕する。
議長を務める中国の習近平国家主席は会議の冒頭で「世界経済はけん引力不足や金融市場の動揺、貿易投資の低迷など重層的なリスクに直面している」と指摘。保護主義の台頭や英国の欧州連合(EU)からの離脱問題などを念頭に、世界経済の下振れへの懸念がこれまで以上に強まっているとの認識を示した。
G20が2014年のオーストラリアでのサミットで掲げた18年までに国内総生産(GDP)を2%以上増やす目標は、すでに実現が危ぶまれている。習主席は「財政政策と金融政策、構造改革を組み合わせてより全面的なマクロ経済政策を取るべきだ」と訴えた。
安倍首相も同調した。先進国の金融政策の方向性の違いや英国のEU離脱問題に触れ「世界経済の見通しに対する下方リスクは高まっている」と発言。「G20全体で危機感を共有し、それぞれの国の具体的行動につなげていくことが重要だ」と力説した。
そのうえで8月に決めた事業規模28兆円の経済対策を説明し、世界経済の下振れ防止に率先して取り組む考えを示した。「大胆な金融政策によりデフレの早期脱却を目指す」と述べるとともに、為替相場に関し「過度の変動や無秩序な動きが経済や金融の安定に悪影響を与えないよう注視していく」と指摘した。
麻生財務相も首脳会議に先立ち開いたG20財務相会合で「世界経済の不確実性が増しているので、市場の安定が特に重要だ」と発言した。日本の主張を踏まえ、首脳宣言にも前回明記しなかった為替に関する文言が盛り込まれる方向だ。
貿易の保護主義をどう防ぐかも大きなテーマになった。
習主席は「多角的貿易体制が打撃を受けている」と表明。安倍首相は「保護主義の誘惑を断ち切るのが政治の責任だ」と強調し「環太平洋経済連携協定(TPP)を停滞させてはならない」と発言した。首脳宣言には太陽光パネルなど環境製品の関税削減や撤廃を巡る交渉の年内完了をめざすと明記する。
世界で頻発するテロが実体経済に悪い影響を与える可能性があるとの認識でも一致する。テロリストの資金源を絶つため、G20が緊密に情報交換する方針を確認する。課税逃れ対策では経済協力開発機構(OECD)が進める国際ルールづくりを歓迎し、G20としても協力する考えを表明する見通しだ。