島野製作所の対アップル訴訟、「米で解決」合意無効 地裁判断
米アップルに部品を供給していた島野製作所(東京・荒川)が、アップルに独占禁止法違反や特許権侵害があったとして損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は16日までに、裁判の管轄について中間判決を出した。千葉和則裁判長は「『紛争は米国の裁判所で解決する』という両社の合意は無効」と判断し、審理を東京地裁で続けると決めた。
島野側はアップルが部品技術を他社に流用させたうえ、リベートの支払いを要求したと主張。独禁法違反などにあたるとして2014年8月、東京地裁に提訴した。両社の契約書には「紛争は(アップルの本社がある)カリフォルニア州の裁判所で解決する」との合意があったため、「日本の裁判所で審理できるか」がまず争われていた。
国籍の違う企業が取引をする際は通常、紛争が起きたらどの国の裁判所で争うかを事前に契約で決める。裁判では自国で争う方が有利なことがあるため、アップルは取引上有利な地位を利用してカリフォルニア州を管轄としたとみられる。
ただ日本の民事訴訟法は、係争地の合意は個々の取引契約ごとに定めなければ無効と定めている。アップルと島野製作所の合意は包括的にカリフォルニア州と決めていたもようで、民事訴訟法の専門家は「無効との裁判所の判断は納得できる」と話す。
今後東京地裁はアップルに賠償責任があるかどうかを審理する。独禁法が専門の川島富士雄・神戸大学教授は「アップルが合意を見直さない限り、今後、国内の他の下請けも同様の訴えを起こす可能性がある」とみる。