鈴木日銀審議委員、政策の副作用「手遅れとなるリスクに十分注意」
日銀の鈴木人司審議委員は29日、那覇市で開いた金融経済懇談会で講演した。日銀が公表した講演要旨によると、累積していく金融緩和政策の副作用について、「将来どこかの時点で顕現化すると、うまく対処することが難しくなることや手遅れとなるリスクがあることに十分注意を払う必要がある」と述べた。金融緩和の効果に加えて副作用の累積にも配慮を示す必要性を強調した。
鈴木委員は2%の物価安定目標の達成のために、強力な金融緩和の継続で「需給ギャップがプラスの状態をできるだけ長く続けることが適当だ」と説明。一方で「どんな良薬にも副作用があるように、金融政策がどのような形で影響を及ぼすか、虚心坦懐(たんかい)に見極めることが重要な観点」と指摘した。
国内金融機関の業績については「国内貸出利ざやの縮小で資金利益が減少しているほか、米長期金利の上昇で債券などの評価損益が悪化している」とし、「地域金融機関を含めた金融機関の経営状況の推移と金融システムや金融仲介機能へどう作用していくかを注視していく」と述べた。
日銀は7月末の金融政策決定会合で政策を一部修正し、長期金利については上下にある程度の変動を容認した。鈴木委員は金利水準が切り上がって、緩和の効果がそがれるとの指摘に対し、「金利が多少上昇しても金融機関の貸し出しや社債市場へ与える影響は限定的だ」と強調。一方で「金利が急速に上昇する場合は、迅速かつ適切に国債買い入れを実施していく方針だ」と話した。
鈴木委員は長期金利の変動幅について「おおむねプラスマイナス0.1%の幅から上下その倍程度の変動を念頭に置くことになる」とした上で、「こうした変動幅は主要国の10年債金利の動向から見ても許容範囲」との認識も示した。
〔日経QUICKニュース(NQN)〕