FRBの金融安定報告「資産価格は歴史的にも高い」 企業の負債増も懸念
【NQNニューヨーク=川内資子】米連邦準備理事会(FRB)は28日に公表した「金融安定報告書」で「金融資産の価格は歴史的水準に比べて高く、投資家のリスク選好の強まりを示している」と指摘した。米企業の負債増加に警戒感も示し、貿易摩擦や地政学リスクなどを巡る警戒感が高まれば「資産価格の下落がかなり大きくなる可能性がある」との認識を示した。
米企業のPER(株価収益率)はここ数年上昇基調にあり、最近の株式相場下落を加味しても「過去30年の中央値をおおむね上回る」とした。商業不動産は「ここ数年、価格の伸びが賃料の伸びより大きい」と指摘した。
民間が抱える負債全体から生じるリスクは「緩やか」としたが「企業負債は高水準で信用状況の悪化の兆しがある」と分析。最近は「収益力が弱く、負債比率が高い企業の負債が大きく伸びている」と警戒感を示した。
半面、金融機関の資本状況は「金融危機後の規制改革の影響もあり、レバレッジ(借金による投資)が歴史的水準に比べて低い」と前向きな評価を示した。
金融システムのリスク要因としては、英国の欧州連合(EU)離脱問題などが欧州経済や金融環境の不安定化につながったり、貿易摩擦などをきっかけに中国の景気減速や民間の負債問題が顕在化したりする可能性を挙げた。また、FRBなど主要中央銀行が進める金融政策の正常化は方針が周知されているが「突然の相場変動率の上昇につながる可能性がある」との見方も示した。