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実像フィンテック 新技術に収益化の芽、国内でも実用化に広がり

ブロックチェーンと呼ばれる新しいIT(情報技術)の実用化を目指す動きが加速している。鍵を握る技術者教育を業界全体で進め始めたほか、金融機関は共同でブロックチェーンを応用した新しい送金システムを構築するためにコンソーシアム(共同事業体)を立ち上げた。仮想通貨など金融とITを融合した「フィンテック」の中核技術は、今後、様々な分野への応用が期待される。経済システムを変えると言われる新技術の現状をまとめた。

エンジニア教育始まる 応用分野の拡大に期待

ブロックチェーン大学校では多くのエンジニアが学ぶ

東京・品川にあるオフィスビルの会議室に、総勢30人前後のエンジニアが集まった。「皆さんは1期生です。責任重大ですよ」。ソフト開発、インフォテリア(3853)の平野洋一郎社長が声高に話し始めた。

平野氏が理事長を務めるブロックチェーン推進協会(BCCC)は技術者のレベルアップを目的に8月に「ブロックチェーン大学校」という教育プログラムを開講。スタートアップ(ベンチャー企業)のエンジニアが週1~2回のペースで講習を受け、幅広くシステム設計の技術を学んだ。それから2カ月。ようやく修了式を迎え、平野氏は「このメンバーと一緒にブロックチェーンのパワーをいろいろなところで使えるようにしていきたい」と受講生を叱咤(しった)激励した。

ブロックチェーンは「分散型台帳技術」と言われ、仮想通貨「ビットコイン」の決済インフラに利用されたことで注目を浴びた。ネットワークの参加者が過去の取引記録の全てを共有する仕組みで、特定の機関ではなく参加者全員でデータを管理することに特徴がある。皆が同時に取引履歴などの情報を共有するため、不正があった際の追跡が可能だ。こうした利点を生かせば、ビットコインだけでなく、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)や登記などでの応用も模索できる。

「技術力向上が産業の土台に」 金融機関からも問い合わせ相次ぐ

期待が先行するブロックチェーンだが、最大のネックは開発部門の担い手の少なさだ。国内のフィンテックのスタートアップ企業は現在30社程度にとどまり、軽く100社を突破する米国との差は大きい。企業の数が少ない背景には技術者不足がある。「エンジニアのレベルアップと分野の広がりを出していかないと、産業の土台が成り立たない」。ブロックチェーン大学校で講師を務めたビットバンク(東京・渋谷)の広末紀之最高経営責任者(CEO)は、エンジニアの教育機関を設置した狙いを説明する。

ブロックチェーン大学校は年間100人以上のエンジニアを受け入れる計画。最近では、自前で実証実験できるようにするために、地方銀行や大手保険会社からの受講の問い合わせも相次ぐ。質問サイトを運営するオウケイウェイヴ(3808)は、約50人在籍する自社のエンジニア全員に、大学校の講座を受講させることを決めた。同社は運営する相談サイトで、回答者への謝礼の支払いにビットコインを使っている。「今後の事業拡大を考える上で、ブロックチェーンという技術は必要不可欠と考え、すべてのエンジニアを派遣することを決めた」(同社の広報担当者)という。

実用化への取り組み活発に 「3~5年後に収益化」の声も

ブロックチェーン実用化の動きは、金融取引の分野を中心に広がりつつある。暗号通貨技術を持つベンチャーのテックビューロ(大阪市西区)は、企業がブロックチェーンを導入するためのソフト「mijin(ミジン)」を10月に一般公開した。現在、約300社に試験的に提供する。「プライベート・ブロックチェーン」と呼ばれる単独企業向けのシステム導入の分野で先駆的な動きとされ、仮に金融機関がミジンを利用すれば、導入だけで数十億円かかる銀行勘定データのサーバーコストを少なくとも10分の1まで減らせるという。

金融機関でも、取り組みが進み、SBIホールディングスみずほフィナンシャルグループやりそな銀行のほか、地方銀行など計42行と共同で、新しい送金システムを開発することを決めた。SBIによると、ブロックチェーンの技術も応用するという。低コストで24時間365日送金することを可能にすることを目指しており、金融機関が払うシステム利用料は従来の10分の1から20分の1まで減らすことが可能という。当初は15行程度が参加する予定だったが、コスト面での効果に着目する地銀が増え、共同事業体に加わる金融機関の数は3倍近くにまで増えた。

インフォテリアの平野社長は「ブロックチェーンは新しい分野なので、誰にでもチャンスがある」と話す。今はビットコインと呼ばれる仮想通貨で利用されている程度にとどまり、ブロックチェーンがビジネスとして開花しているとは言い難いのが実情だが、「3~5年後には、活用の場が広がり、収益化が見えてくる」(ビットバンクの広末CEO)との声も聞かれる。社会変革とも言われる新技術の実用化の動きがどこまで広がるか、注目を集めそうだ。

〔日経QUICKニュース(NQN) 鈴木孝太朗〕

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