2018年7月21日(土)

決算発表「一番乗り企業」へ 深夜3時の準備作業

2015/5/3付
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 企業の2015年3月期決算発表がピークを迎えている。東京証券取引所の発表によると、今年の決算発表の集中期間は4月25日から5月15日。東証の記者クラブは発表企業や証券会社の社員と報道関係者で連日ごった返す。こうした中、約2400にのぼる3月期決算企業で発表「一番乗り」を競う企業がある。近年では4月1日に超高速発表を行うほどスピードは加速している。

 4月1日、今年のトップバッターとして決算を発表したのは焼き肉・焼き鳥チェーンのあみやき亭。愛知県春日井市の本社では午前3時から2人の経理担当者が決算短信の作成に取りかかった。全国約230店舗から集めた3月31日の営業実績をまとめ上げ、昼の12時に作業が完了した。3月期決算企業の発表一番乗りは、同着も含めて5年連続だ。

【開示一番乗りの20年史】
1996年4月17日ホギメデ(東証2部)、KOA(6999、東証1部)
97年4月15日ホギメデ
98年4月14日ホギメデ
99年4月14日ホギメデ、日製産業(現・日立ハイテクノロジーズ、8036、東証1部)
2000年4月7日メッツ(4744、東証マザーズ)、京都きもの友禅(7615、店頭公開)
01年4月2日メッツ
02年4月1日メッツ
03年4月4日メッツ、アドヴァン(東証1部)
04年4月2日メッツ、アドヴァン
05年4月1日メッツ
06年4月3日メッツ、アドヴァン、あみやき亭(東証1部)
07年4月2日メッツ、アドヴァン、あみやき亭
08年4月1日メッツ
09年4月1日メッツ
10年4月2日アドヴァン
11年4月4日アドヴァン、あみやき亭
12年4月2日アドヴァン、あみやき亭
13年4月1日アドヴァン、あみやき亭
14年4月1日あみやき亭
15年4月1日あみやき亭

(注)表中の市場区分は当時。

 決算発表一番乗りの歴史を振り返ると、1996年当時はホギメディカルが4月17日に発表していたが、2000年に入ると防犯システムのメッツが4月7日に発表と約10日間早まっている。「せっかくならばトップで決算を開示しよう」。あみやき亭の佐藤啓介社長は02年の株式上場時から早期開示に意欲を見せてきた。超高速の決算発表のからくりは8年ほど前から始めた「日々決算」だ。小売業では月間や四半期の売上高速報を発表する企業も多いが、あみやき亭は原価率などの計算も毎日行っている。日々のデータを集計しておき、3月31日分だけを積み上げれば決算短信の作成にかかれるという具合だ。

 企業が発表する決算情報を巡っては法律上、四半期報告書や有価証券報告書監査法人からの承認を得なければならない。しかし、決算短信は監査法人の承認がなくても開示できるため、決算期末の翌日開示も可能だ。これらの条件を最大限生かして一番乗りを狙う企業はあみやき亭に限らず、発表時刻レベルでの競争になる年もある。07年はあみやき亭とメッツ、輸入建材商社のアドヴァンの3社が「同着」となった。

 決算発表一番乗りを狙う理由は、やはり広告宣伝効果の期待が大きいようだ。決算発表の先頭に立てば市場関係者や一般社会からの注目も集めやすく、投資家向け広報(IR)活動にも前向きとの評価も得られるという訳だ。事業規模の面で作業がしやすい中小型の新興企業にはこうした意欲が強い。さらにあみやき亭の場合、一番乗りを目指す過程で導入した日々決算の手法によって計画の達成状況の確認や、問題点を迅速に把握できるという経営上の利点がある。「より経営の質を上げる取り組みの結果が、素早い決算開示につながっている」(同社)という。

 一定の認知を得ると一番乗りレースから降りる企業も少なくない。アドヴァンもかつては「決算発表が早い企業として認知してもらえる」との期待があったというが、最近はイメージが定着したため「むやみにトップを狙うことはない」という。

 今年は4月10日に開示したホギメディカル。20年前のように一番乗りに姿を見せることはないが、もともとの方針である8営業日での開示を維持している。「例年10位には入っている」(同社)として、さらに早い発表は現在のところ考えていないようだ。

 早期に決算を開示する企業がある一方で、東証が定める「決算期末から45日以内の発表」のルールから大幅に遅れる企業もある。14年は娯楽機器販売のJALCOホールディングスの決算発表が6月12日まで遅れた。JALCOをめぐっては金融庁が同年12月17日、有価証券報告書への虚偽記載により課徴金1億5150万円の納付を命令しており、不祥事が決算発表の遅れにもつながった。

〔日経QUICKニュース(NQN) 石川隆彦〕

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