日銀総裁、現行緩和「物価達成に十分」 財政健全化の重要性強調
日銀の黒田東彦総裁は20~21日に開いた金融政策決定会合後の記者会見で、導入から1年たった長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和について「新発10年物国債利回りが(目標とする)ゼロ%程度で安定的に推移している」と自信を示した。2%の物価安定目標に向けて十分な政策との認識も述べた。
日銀の金融政策を通じて金融機関の貸し出し態度が積極的になっているほか、賃金の上昇や個人消費の底堅さなどの効果を強調。副作用として市場で批判を浴びる債券市場の流動性低下も、客観的な指標をみると足元ではむしろ改善していると述べた。一方で物価の伸び悩みが継続している点は「(2%の物価安定)目標の実現には距離がある」と認め、今後も強力な金融緩和を粘り強く続ける考えを改めて示した。
日銀の金融緩和が財政規律の緩みをもたらしているとの批判もあることに対して、黒田氏は「財政赤字は減ってきているほか、短期的な景気刺激策も実施しており、(財政運営については)一定の効果を挙げている」と評価。一方で「財政規律は重要だ」と念を押し、基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化の必要性を訴えた。
2013年1月に政府と日銀が結んだ政策協定(アコード)では、2%の物価安定目標の達成と財政健全化に向けて両者が一体となって取り組むことを明記している。黒田氏は「アコードは生きている」と強調した。
会合では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和の継続を8対1で決めた。今回の会合から審議委員に加わった片岡剛士氏が「現行の金融緩和は19年度頃に2%の物価上昇率を達成するには不十分」として反対票を投じた。新審議委員が初めて参加する会合で反対票を投じるのは珍しいが、黒田氏は「異常ではない。活発な議論が行われるのは結構なことで、今後もそうした議論を踏まえて多数決で政策を決定する」と余裕を見せた。
エコノミスト出身の片岡氏は具体的な政策提案をしたわけではないが、リフレ派として知られ追加緩和を求めているとみられる。黒田氏は「8人(の審議委員)が現在の政策維持に賛成しており、2%の物価安定目標に向けて十分と考えている」と指摘。そのうえで「必要があればさらなる緩和も行う」と将来の追加緩和の可能性を否定しなかった。前回の会合で審議委員を退任した木内登英氏が、物価上昇率2%にこだわる日銀を批判していることについては「目標の変更や放棄は適切ではない」と一蹴した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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