「国内外の景気、緩やかな回復基調」 本社景気討論会
日本経済新聞社と日本経済研究センターは17日午後、東京・大手町の日経ホールで景気討論会を開いた。出席者は国内外の景気について「緩やかな回復基調にある」との認識で一致した。一方で、地政学的リスクや米トランプ政権の政策の不透明さなどに起因する政策リスクへの懸念の声も聞かれた。

出席者は小堀秀毅旭化成社長、国分文也丸紅社長、翁百合日本総合研究所副理事長、岩田一政日本経済研究センター理事長。司会は長谷部剛日本経済新聞社東京本社編集局長。
旭化成の小堀社長は「景気全体はなだらかに上昇している」とする半面、国内景気については「いま一歩力強さが感じられない」と話した。インターネットの急速な普及に伴い、家計の中で通信費の占める割合が上昇していることを受け「モノへの支出余裕が減り、物流も含めた荷動きが活性化されていない」ことが背景にあると分析した。中国については「需給のアンバランスさが縮小し、在庫調整サイクルも短くなっている」と中長期的な事業環境が好転しつつあるとの認識を示した。
丸紅の国分社長は「国内外を含め大きなリスク要因はなく、基本的には(景気動向は)非常に堅調だ」との認識を示した。米国景気に対しては「非常に強い」とした上でトランプ米政権の政策の不安定さや政策の実効性などを懸念事項として指摘。国分氏は「(政策の)落とし込みができない場合の失望というマイナスの部分」だけでなく「財源が(はっきり)出ていない中で実行された際に過熱感が出るのもリスクではないか」と述べた。
日本総合研究所の翁副理事長は「日本経済は緩やかな持ち直しが継続している」との認識を示した。その上で、個人消費が力強さを欠く要因として、高齢者や女性などの短時間労働の増加により「雇用情勢は大幅に好転しているが、賃金上昇が大きくない」ことを指摘した。欧州については「来年ごろから金融政策を転換し、量的緩和の縮小を始める可能性がある」との考えを示した。英国の欧州連合(EU)離脱交渉については「人の移動の制限など様々な論点があり、注目して見ていきたい」と述べた。
日本経済研究センターの岩田理事長は、日本景気の現状を「(小泉政権下の)グレートモデレーション(超安定化)の時期に似ている」と分析した上で、異なる点として地政学的リスクやトランプ米政権の政策リスクの高まりなどを挙げた。また、岩田氏は米国の財政政策と金融政策が共に「ドル高要因」寄りであるとの認識を示し、米政府が企業収益への影響の打開策として「保護貿易の措置を取るリスクが相当あるのではないか」と懸念を示した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕