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豊島逸夫の金のつぶやき

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米中「第1段階合意」に暗雲

2020/1/15 10:53
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「現行の関税引き下げについては、中国側による合意決定事項の履行状況をみて決める。米大統領選後にずれ込むことも」

「関税引き下げの道筋は決まっていない。トランプ米大統領は、第2段階交渉のため訪中を考えている。その時期は大統領選直前か。関税引き下げ案は選挙直前に発表の可能性も」

米中通商交渉の第1段階合意の署名式がいよいよカウントダウンに入るなかで、先行きに懐疑的な報道が相次いでいる。14日のニューヨーク市場は、午前こそ大手銀行の好決算発表を歓迎してダウ工業株30種平均が大幅に上昇したが、午後はこれらの報道を受け急速に伸び悩んだ。終値は前日比32ドル高にとどまった。

結局、フタを開けてみないとわからない。

現時点では米通商代表部(USTR)のウェブサイトに載る19年12月13日付の声明文だけが公式発表だ。そこでは、約2500億ドル分の中国からの輸入に対する25%関税を維持し、約1200億ドル分については7.5%引き下げとだけ記されている。

ただし、この関税については、中国が第1段階合意で決まった約束を守るかどうか次第、というのが米国側のスタンスとされる。対する中国側の切り札は米国産の農産品の購入だ。400億ドル相当とされるが、中国側が具体的な購入額を明らかにするかどうかは定かでない。400億ドルといっても、すでに米国から輸入してきたものと、今後の努力目標を合わせたものだ。

中国はこの購入を有力な取引材料にして、できるだけ大幅な関税引き下げを勝ち取りたい。足元で好転の兆しもみえるが、中国経済の減速傾向は変わらない。貿易戦争で失われた雇用を取り戻すことは、中国にとって喫緊の課題だ。米国側はその中国の弱みを突き、通商交渉が決裂したら関税引き下げすら実現しないと威嚇する。

決定事項の履行の検証についても、米国の主張は強硬だ。中国側からみれば、お目付け役によってコンプライアンスを見張られているようで抵抗感は強い。米国側も、武士の情けとばかりにあえてルールの「順守」「検証」という表現は避け、「仲裁機関の設立」にとどめてはいる。

決定事項の達成率に応じて関税を引き下げる、という発想もある。それをトランプ氏は「第1段階で60%」と表現した。中国側は当然、達成率はそれ以上とはじくが、定量化するのは難しい。

米国内は弾劾問題も含め、大統領選の行方が予断を許さない状況だ。トランプ氏も、第1段階合意を「グレートなディール」から「できる範囲でのベスト・ディール」という表現に変えてきた。現時点で折り合える範囲の合意なら、今後も有権者に追加的な成果を誇示できる。それも大統領選の直前になれば、インパクトは強くなる。

決裂だけは許されない。1200億ドル分の関税引き下げ幅である7.5%は、中国にとっては「米国に引き下げさせた」と言えるし、米国としては「まずはこの程度で抑え、相手の出方をみる」と言える。

トランプ氏の関心は、米大統領選の接戦州に向いている。一方、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は、国内で弱腰と映る交渉結果だけは避けねばならない。中国では米中通商交渉に関する報道規制も厳しくなってきた。

カウントダウン開始の時点になって様々な観測記事が飛び交う神経戦が展開されている。金融・資本市場にも張り詰めた緊張感が漂ってきた。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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