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貿易摩擦、米中どちらが音を上げる? 戸惑う市場

2019/8/14 11:03
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誰も想定しない劇的展開であった。

13日の米ニューヨーク(NY)市場の寄り付き前には、香港国際空港大混乱の映像が流れ、安全通貨としての円買いが加速。一時は105円の大台ギリギリの水準まで円高が進行していた。日経平均株価時間外も2万円に接近していた。そしてダウ工業株30種平均も前日比マイナス圏で始まった。

異変が起こったのは、その直後だ。

ダウ平均がジワリ、プラス圏に転じるや、スルスルと100ドル高、200ドル高と上げ幅を加速。一時は500ドル超まで急反騰を演じた。

それと並行して、マーケットは米通商代表部(USTR)発表のプレスリリースの解釈に揺れていた。

「対中10%の追加関税発動を、一部の品目に限り、安全上、健康上などの理由により、12月まで延期する」

さらに、この発表前に、米中閣僚級電話会談が行われたことも明らかになった。参加者名には劉鶴経済担当副首相、ライトハイザーUSTR代表、ムニューシン財務長官らの名前が並ぶ。

外為市場では、円が1ドル=106円台まで急反落。金は1トロイオンス=1510ドル台から瞬間的に1480ドル台まで、崖を落ちるがごとき下げっぷり。

「米中貿易摩擦に進展の兆し」がアルゴリズムを通じて、投機的ポジションの一斉巻き戻しを誘発した。

株は空売りの買い戻し。円と金は投機的買いの売り戻し。ただし、巻き戻しが一巡すると、そこで値動きは止まった。あとのフォローの売買が続かない。

株式市場にとって、思わぬトランプ大統領からの気が早いクリスマスプレゼントであったが、その賞味期限は疑わしい。あけすけな朝令暮改を見せつけれられると、次のツイートで、また、ちゃぶ台返しを食らわされるかも、と市場は疑心暗鬼になる。

その市場混乱のなかで、唯一冷静だったのが債券市場であった。

注目の米10年債、2年債利回りは、どちらも反発したが、株式・外為・商品市場に比べると、かなり控えめな反応だ。特に注目の中心となる10年債と2年債の利回り格差は一時0.02%前後まで縮小した。本格的逆イールドに接近の動きは前日より加速している。

株式市場は素直に米中歩み寄りを歓迎しているのだが、債券市場は、逆イールド=不況の兆しという呪縛から抜けきれない。

やはり株式市場は楽観論で育ち、債券市場は悲観論で育つものなのか。

米連邦準備理事会(FRB)の利下げ確率にも著しい変化は見られない。

NY寄り付き前に発表された7月の米消費者物価が、変動の激しいエネルギーと食品を除いたコア指数で年率2.2%の上昇を見せたのだが、市場に染み付いた低インフレ症候群が快方に向かう兆しは見られない。

結局のところ、マーケットの表面に積もった投機的ポジションの新雪が、USTRからの異音で表層雪崩を起こした。市場には雪崩警報が引き続き鳴り渡り、警戒モードは解けない。

深読みすれば、電撃的追加関税一部延期により、習近平(シー・ジンピン)政権は、「待ち」の作戦で第1ラウンド判定勝ちを取った、ということか。大統領選挙を視野にトランプ大統領は、クリスマスプレゼント対象品目に対する課税を延期せざるを得なかった。

とはいえ、クリスマスの後には中国の春節がある。年に一度の里帰りに満足なお土産も買えないようでは、人民の不満も高じ、予期せぬ社会不安も起きかねない。ここは長老たちとの「北戴河会議」で、習近平氏がきっちりくぎを刺されたところであろう。しかも、きたる10月1日には国慶節を迎える。今年は特に建国70周年記念の年だ。国内に弱腰は見せられない。

下落が加速していた人民元相場も、追加関税延期で反発したが、潮目が変わったとはいえない。

しかも、香港危機は悪化の一途をたどっている。ここには中国側が絶対譲れない一線がある。

「待ち」の作戦も、習近平政権にとっては、瀬戸際での危うい綱渡りなのだ。

香港危機に対するトランプ大統領の態度は素っ気ない。ツイートも感情は出さず淡々と「中国政府は軍を香港境界に移動中。平静を望む」という程度だ。トランプ氏が気になるのは来年の大統領選挙だけ。その趨勢に影響を与える米中貿易摩擦で頭がいっぱい。香港は二の次なのだろう。ただし、米中貿易交渉の材料としてなら、香港問題は使える。トランプ氏が習近平氏に「香港には関与せず」との暗黙のメッセージを送っているようにも見える。巷間(こうかん)では米中央情報局(CIA)の関与も噂されるが、トランプ大統領とCIAの間の距離感は周知のとおりだ。

かくして第2ラウンドは、香港をテコに、トランプ側が判定有利を取るかもしれない。中国が米農産品の大量購入に動くシナリオなどがあり得る。トランプ氏は13日のツイッターで「中国は偉大な米農家から大規模な購入を行なうと言ってきたが実行していない。しかし、今回は違うかもしれない」と述べているからだ。

米中貿易「消耗戦」の成り行きに一喜一憂する市場の状況は変わらない。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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