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朝令暮改のトランプ氏、市場は次期政権視野

「ゴー!ビッグ!(大きく行け!)」。トランプ米大統領のツイートが9日のニューヨーク市場で株価を押し上げた。「大きく行け」とは、新型コロナウイルス対策の包括的な追加財政支援額のことだ。

ムニューシン米財務長官とペロシ下院議長の間でまとまりかけていた支援策に突然のツイートで「交渉打ち切り」を告げたのはそもそもトランプ氏だ。代替案として部分的支援案を提示し、株価急落を招いていた。

支持率も急落し、さすがに考え直したのか。再びツイートで態度を一転させた。相変わらずの朝令暮改だが、マーケットにとって悪い話ではなく、株価は上昇した。

新しいトランプ案は総額を当初案の1.6兆ドルから1.8兆ドルに引き上げた。しかし、2.2兆ドルの民主党案との溝は容易に埋まらない。ペロシ氏は、コロナ検査・追跡調査費、失業保険上乗せ額、そして子供への支援が不十分としてトランプ案を一蹴した。

一方、共和党からは、コロナ対策の財政支出はすでに3兆ドル近くに達しており、これ以上の大型追加支援は「やり過ぎ」との批判が噴出している。

共和党議員からの不満の矢面にたたされたメドウズ大統領首席補佐官は「(その不満を)大統領に言上したら、私の葬式になる」とブラック・ジョークを発している。トランプ氏の病状を「心配」と記者団に語り、本人から大目玉を食らった経緯もあるからだ。

メドウズ氏はムニューシン財務長官と連名で議会宛てに「すでに実行中の中小企業の従業員給与を肩代わりする支援策(PPP)にまだ残りがあるので、歳出に回せる」と訴えている。

我が道をゆくトランプ氏は、週末にはラジオで「はっきり言おう。私は、共和党案よりも民主党案よりも大きな額を考えている」とまで語った。さすがに「殿、ご乱心」とばかりに、ホワイトハウス報道官は「トランプ政権としては2兆ドル以下を望んでいる」と火消しに走った。

政治的に独立の立場を守る米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「財政支援が多すぎるリスクより少なすぎるリスクのほうが大きい」と議会に合意を促している。

もっとも、現時点での米議会の関心は、コロナ支援策より最高裁判事指名に関する承認公聴会にある。

二転三転するトランプ氏のツイートにしびれを切らした市場は、年内追加財政支援合意をあきらめ、バイデン氏が大統領選に勝利して新政権で見込まれる大規模インフラ投資を織り込む方向に動き始めている。各種世論調査が、民主党が大統領職と上下両院を制する「ブルーウエーブ」の確度の高まりを示しているからだ。

焦る現職のトランプ大統領は、自身のコロナ感染からの「全快」を強調し、大統領選での勝利に意欲を示し続けている。多くの米国民が不安げに見守るなか、株式市場は2021年のマクロ経済や企業決算のシナリオを吟味中だ。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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