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豊島逸夫の金のつぶやき

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FRB「冬眠」へ、覚醒後の一手は

2019/12/11 12:03
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11日に開く今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は「無風」の見通しだ。市場参加者のほぼ全員が「動かず」と予想するのは珍しい。

7~9月期の米国の実質成長率は改定値で2.1%と速報値の1.9%から上方修正となった。雇用統計は強い数字が並ぶが、利上げを考慮する必要があるほどインフレ率は高まっていない。「米連邦準備理事会(FRB)は冬眠に入った」といわれるゆえんだ。

2020年も通年で「FRBは動かず」との予測が少なくない。仮に動いても、6月くらいに利下げ1回程度だろう。次の景気後退局面に備え、金融政策の自由度はできる限り温存しておきたいところだ。

政策への注目度は、金融政策から財政政策にシフトしそうだ。

米大統領選を視野に、共和党も民主党も積極財政を唱える。市場は財政赤字リスクを意識し、債券相場が波乱の中心となりがちな市場環境が見込まれる。

トランプ米大統領による「FRBたたき」「利下げ強要」発言は続きそう。「株価維持のための利下げ」というより、株価下落時に責任をFRBに転嫁する場面が増えそうだ。

人事面ではFOMCメンバーが徐々にトランプ色に染まってゆく。2020年には現在空席であるFRB理事ポストを2人の「トランプ派」が占めることになりそうだ。そのひとり、ジュディー・シェルトン氏は保守派のエコノミストで、トランプ氏の選挙陣営の元幹部。メディア露出も多いが、最近はFRB理事の指名承認を意識してか、控えめな発言が目立つ。

投資家は、2020年に利下げに積極的な「ハト派」が2人増えることを意識しそうだ。FOMCメンバーの金利予測分布を示すドット・チャートに少なからず影響を与えよう。FRBのパウエル議長は、トランプ氏の圧力を19年より直接的にFOMC内で体感することになりそうだ。

それでもパウエル議長は「データ次第の政策決定」と語り続けるだろう。だが、その実態は「米中協議次第」となっている。今回のFOMCも対中の「第4弾」の追加関税発動が予定されている15日以降であったなら、「無風」とは言い切れなかっただろう。

米中通商交渉は、15日の追加関税発動と米中貿易「第1段階」合意の「両方とも先送り」シナリオが浮上している。妥協に向けて、米中はどちらも先に動きたがらない。焦点は米農産品の年間4兆~5兆円相当の購入だ。中国は追加関税が撤回されれば購入を実行する姿勢。対する米国は購入が合意文書に明記されれば追加関税を撤回する姿勢だ。米国側はさらに、四半期ごとの購入実績の検証を要求しているうえ、予定購入額の未達許容範囲を10%以内と定めることも求めているようだ。

トランプ氏の意図としては当面、農民票獲得のため対中強硬路線を唱え、重要な予備選が重なるスーパーチューズデー(3月3日)までには「第1段階」合意に結びつけて、株価が最高値を更新する希望的シナリオが透ける。強い米雇用統計はトランプ氏に「対中の強硬姿勢で株価下落も辞さず」との心理的余裕を与えた。

株価は動きが乏しい一方、相場の予想変動率を示し「恐怖指数」とよばれるVIXだけが、15台と最近としては高水準を維持しているのが示唆的だ。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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