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イーノさん 不確実性を見える化(投信ブロガー)

ブログ「ファンドの海」を運営するイーノ・ジュンイチさん(50代前半の男性、独身)は、IT関係のフリーランスライター。ブログ上で誰でも自由に使えるよう公開している「アセットアロケーション(資産配分)分析」は、著名な投信ブロガーの間でも自分自身の資産配分を決める際に重宝していると評判のツールだ。

10年前から始まった投資家イベントの「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」や「インデックス投資ナイト」では初回から実行委員として活躍し、裏方仕事にもやりがいを感じつつあるというイーノさんに、資産配分を分析するツールの注目点を聞いた。

投資信託をテーマにした個人ブログは国内初

――投資を始めた経緯を教えてください。

「投資に興味を持ち始めたのは今から20数年以上前、20代の後半ですが、投資の勉強を真剣に始めたのは30歳を過ぎた頃です。金利がすっかり下がってしまい、銀行の定期預金にお金を預けていてもほとんど増えなくなったからです」

「ただ当時は、定期預金のほかにどういった金融商品があるのか、証券会社は何をしているところかなどの知識は全くなく、マネー関連の雑誌やムック本を何冊か買って、世の中にいろんな金融商品があるのを知りました。当時はまだブログもソーシャルメディアもなかったので、本や雑誌だけがほぼ唯一の情報源でした」

「雑誌編集の仕事をしていた当時、個別株投資は考えませんでした。株以外の金融商品に関する情報を集め出したところ、投資信託という商品があるのを初めて知りました」

「数カ月後には証券会社の地元の支店に口座を開き、最初の投信を買いました。たしか外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)だったと思います」

――ブログを立ち上げたのはいつですか。

「ちょうど日本でブログのサービスがスタートして、はやり出したタイミングの2004年にブログを始めました。編集者という職業柄、自分で文章を書くのはごく自然な成り行きでした。おそらく日本で初めて投信をテーマにしたブログだったと思います」

毎月10万円以上の積み立てを20年近く継続

――投資金額はどのくらいですか。

「最初は200万円を投じ、それからは20年近く毎月10万円以上の積み立てを継続しています。余裕資金があればまとめて一括投資したりもします。投信の保有資産額は現在、数千万円です」

「ただ、積み立て投資の効用を妄信しているわけではありません。毎月機械的に資金を投じることで手間暇がかからず自分には一番適した投資手法、それで十分だと思っています」

「米リーマン・ショックの頃には仕事が忙しく、どのくらい損失を出しているのか気にもしませんでした。もっとも最近はスマホの家計簿アプリを使うといや応なく毎日、保有時価が確認できるようになりました」

「フリーランスのため、これとは別に個人型確定拠出年金(iDeCo)と国民年金基金に合わせて毎月上限の6万8000円を拠出し、iDecoではTOPIX(東証株価指数)連動型とMSCIコクサイ指数連動型のインデックスファンドを各1万円ずつ購入しています」

――インデックス運用を始めたきっかけは。

「インデックス投資の名著である『ウォール街のランダム・ウォーカー』と『敗者のゲーム』(共に日本経済新聞出版社)を読んで、『シンプルで手間要らず、低コスト』という魅力に引かれ、インデックス運用にシフトしました。10年あまり前のことです」

「投信を最初に購入し始めた頃は、雑誌の巻末の各種ランキング上位に載っているアクティブ(積極運用)ファンドなど、今思うと変な投信選びをしていました。その中には、運用資産残高の縮小で繰り上げ償還された投信もあります」

「毎月、積み立てして現在保有しているのはTOPIX連動の国内株型、MSCIコクサイ指数連動の先進国株型、新興国株指数連動型のインデックスファンドの3本です。配分比率はそれぞれ49%、41%、10%と結構おおざっぱです(図A)」

「より低コストのインデックスファンドは他にありますが、よほどの違いがない限り別のファンドに切り替えるのは何かと面倒、と考える性分なので今のところ3本積み立てのほったらかし状態です」

「債券については、2年ほど前までは個人向け国債を保有していましたが全部売却し、マンション購入資金の一部に充てました。住宅ローンもあります。減税メリットがあるからです」

「少額投資非課税制度のNISAとつみたてNISAは利用していません。節税効果があるといっても非課税に期限があるなど、20年も投資し続けている自分にとっては、今から活用し始めても手間が増えるような気がするからです」

「もっとも、つみたてNISAは自分の20代、30代の頃にこんな制度があったらなと思うくらい、これから投資を始める若者が活用しないのはもったいないとは思います」

期待リターンの不確実性を見える化

――アセットアロケーション分析について説明してください。

「08年ごろに、資産運用の長期の成績はアセットアロケーション(資産配分)でほぼ決まるという有名な学術論文を読み、触発されました。ブログ上で資産配分の分析をツール化してみようと思い立ちました」

「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は『基本ポートフォリオの検証について』という資料の中で、『国内債券』『国内株式』『外国債券』『外国株式』の4種類の資産について、将来の『期待リターン』、価格変動リスクに対応する『標準偏差』、資産間の値動きの連動性を示す『相関係数』の3つの指標の数値を開示しています」

「これに『新興国株式』について独自調査した数値を加えて作ったツールが『アセットアロケーション分析』です。各自想定するポートフォリオの資産配分比率を5資産それぞれに指定すると、現代ポートフォリオ理論の数式を使ってポートフォリオ全体の期待リターンとリスクを年率表示する仕組みです」

「株式に加えて債券を組み入れると、期待リターンをそれほど下げずにリスクの低減幅をより大きくできるなど、資産の分散効果を数値で確認できます」

――「長期投資予想」の計算に苦心したそうですね。

「注目して欲しいのは『長期投資による運用結果の予想』というグラフです。求まった期待リターンとリスクの値を基にして、複利効果で30年後に到達する資産額とその達成確率を表示しています」

「期待リターンと資産運用の『不確実性』を見える化したものです。考え方や計算方法は探しても分からなかったので、自分で考えを巡らしました。図書館などで調べた数学の知識とプログラミングの経験が大いに役立ちました」

「例えば、100万円を元手に5資産に20万円ずつ均等配分したとすると、運用コスト無しでの期待リターンは4.71%で、リスクは12.56%(ともに年率)になります」

「期待リターン通りだと、100万円の元本は30年後に約400万円と4倍に膨らみますが、リターンが期待値以上になる確率は約37%で5割に届きません」

「さらに重要なのは、確率的に最も起こりそうな運用結果は209万円ほどになり、年率換算したリターンは約2.5%と期待リターンの半分程度にとどまる点です。リスクが大きくなると将来のリターンをむしばむ可能性が高まるのが分かります」

「100万円の元本が30年後に元本割れする確率は3.7%とかなり小さいことも確認できます。いずれも金融工学の厳密な式を適用して求めていますが、あくまで理論的な参考値であり、現実の金融市場ではリーマン・ショックのような大変動が起こる場合がある点には注意してください」

投資家イベントで低コスト化の流れに勢い

――投資家イベントの開催で何か変わりましたか。

「昨年の『投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year』では、金融庁の森信親長官から『消費者目線での良質な投信を選んで育てていこうとする取り組み』に対する祝辞を頂戴し、感激しました。インデックスファンドの低コスト化が勢いづく流れにつながってきたのではないかと、意義とやりがいを感じています」

「あまりにもたくさんの投信があり、十分な知識がないと適切な商品を選ぶのは難しそうです。まずは『ウォール街のランダム・ウォーカー』や『敗者のゲーム』など定番の書籍を読んで、インデックス運用の考え方を理解するのが一番と思いますが、分厚い本なので、手っ取り早くというわけにはいかないかもしれません」

「そんな投資初心者の方でも『投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year』での投票ランキング結果はすごく参考になるはずなので、ファンド選びの際にはぜひ注目して欲しいです」

(QUICK資産運用研究所 聞き手は高瀬浩)

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