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豊島逸夫の金のつぶやき

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トランプ支援策、MMTやFRB株購入まで議論に

2020/3/11 10:36
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この24時間に、膨れ上がった投機家ポジションの荒っぽい整理が市場内で連鎖的に発生した。株売り、ドル売り、米国債買い、原油売り、金買い。これらの巻き戻しが集中したのだ。

筆者がフロアトレーダーとして働いたニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)

筆者がフロアトレーダーとして働いたニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)

キッカケは10日日本時間早朝の記者会見でトランプ米大統領が語った「ドラマチックな支援策」の一言だ。社会保障、健康保険の雇用者と被雇用者負担を「減税」。しかも、その後の共和党議員との会話で「年内はゼロにする」という意図が伝わった。10日のニューヨーク(NY)株式市場では一時前日比マイナス圏にまで沈んでいた株価が一気に勢いを取り戻し、終わってみれば1100ドルを超える急反騰となった。

とはいえ、期待しつつも疑心暗鬼という複雑な心境が市場を支配している。いわゆる「給付税」の規模は1兆ドルを超す。

これを年内という期限付きとはいえ、ゼロにするなど、無理筋である。財源として国債を増発すれば、たちまちドル金利の「悪い急上昇」を誘発する。安全資産のはずの米国債が一転リスク資産と化す。なにやら、非常時であれば通貨を発行する国家の財政赤字が膨らんでも問題ないとする現代貨幣理論(MMT)のにおいさえ漂う。

そもそもホワイトハウスのスタッフたちも「初耳」で、急ごしらえの案件ゆえ間に合うのか、との報道も流れている。トランプ氏は改めて記者会見で詳細を話すと明言しているので、11日の市場注目イベントになりそうだ。仮に延期されればされるで市場の不安を煽(あお)る結果になりかねない。

舞台裏ではムニューシン財務長官が民主党側との根回しに奔走しているという。コロナ対策という位置づけで超党派で臨むとはいえ、トランプ氏とペロシ民主党下院議長は、目も合わさず、口も利かないほど悪化しているからだ。クドロー国家経済会議(NEC)委員長も加わり、民主党との会食が11日には予定されているとの報道もあり、マーケットも一喜一憂となりそうだ。

国債による資金調達コストを抑えるために、トランプ氏の米連邦準備理事会(FRB)への利下げ圧力もさらに強まろう。

先走り気味の市場では来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の追加利下げ、さらに、4月には0.5%の緊急利下げ予測が独り歩きしている。さらには、ボストン地区連銀総裁ローゼングレン氏が講演で「FRBの買い取り資産対象拡大」に言及したことで、にわかに、FRBも株式購入の可能性が論じられている。ただし、これには連邦準備法13条の変更が必要となり、時間が必要だが、日銀の事例がウォール街でも話題になりつつある。これまでは「中銀の株購入は株価をゆがめる」と論じていた人たちが、今回ばかりはコロナウイルス関連株価対策の一つとしてやむをえない選択と語る。

なお、トランプ大統領の新型コロナ対策として、シェール生産者支援も検討されている模様だ。「救済」ではない、とのただし書きつきである。

シェールが基幹産業で大統領選では重要州となるテキサスでは、シェール業者たちの悲鳴が聞こえる。原油価格が戻したとはいえ1バレル34ドルでは、とてもやっていけない。ハイイールド債を発行した企業にはデフォルト(債務不履行)・リスク。銀行からの融資で賄ってきた企業は返済遅延リスク。シェール業界に貸し込んだ銀行では不良債権急増リスク。特にテキサスの地方金融機関は財務的に耐えられるのか。銀行信用リスクも懸念される。現実的には業界内で整理統合が進行することになろう。このままでは「米国が世界最大の産油国」とのトランプ氏お気に入りのコメントも、使えなくなる可能性がある。サウジは既にタンカーまで手配して、原油値下げ販売競争に乗り出す構えだ。ロシアも原油輸出は国家予算にかかわることゆえ、引くに引けない。

コロナウイルス禍による消費国の原油輸入減という需要要因と増産競争という供給要因が同時進行中だ。これまでにない複雑な構造のオイルショックとなりつつある。原油の投機的売買に走るヘッジファンドにとっては、格好の草刈り場と化してきた。そもそも数時間で30%もの暴落とは、とても需給だけで説明できる話ではない。この原油価格戦争に勝者なしと言われるが、原油空売り攻勢で大もうけしてほくそ笑む投機家もいるのだ。

原油も株式も視界不良のなか、先物市場での投機的売買に振られる日々が当分続きそうである。

豊島逸夫(としま・いつお)

 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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