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豊島逸夫の金のつぶやき

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米中貿易協議、日米型の「停戦」望む市場

2019/10/9 10:43
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8日の米国株市場でニューヨークダウ工業株30種平均は前日比313ドル安だった。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が講演で短期金融市場の混乱への対策として短期国債購入という疑似的な量的緩和に言及したのは相場の一定の支えになったが、変動要因としてはやはり米中通商摩擦が最も強く意識されている。

投資家は、米中共倒れを回避するため「停戦合意」シナリオを描いていた。全面合意は、はなから期待していない。

まずは中国側が米国農産物の輸入を拡大する。米国は予定されている追加関税の一部を撤回するか、あるいは発動を延期する。ハイテク覇権に関わる問題は先送りする。譲れるギリギリの線で合意し、核心は長期協議で継続交渉という日米貿易交渉の「停戦モデル」に準ずる条件付き歩み寄り、これを金融・資本市場は期待していた。

しかしその楽観論は8日、一気に吹き飛んだ。中国が絶対に譲れない人権問題を、米トランプ政権が米中貿易交渉に絡めてきたからだ。米国はウイグル族弾圧に利用されている監視カメラの中国製造大手に対する禁輸措置に踏み切った。本件に関わるとされる人物へのビザ発給も制限し、さらに米国の公的年金基金による中国への投資制限について再び検討する姿勢もちらつかせている。

中国側の報復措置が危惧されるところに、今週ワシントンを訪問する中国の貿易協議団が、予定を繰り上げて帰国するとの観測報道が流れた。団長役の劉鶴副首相には、今回も「全権大使」の肩書がついていない。これも不透明感を呼んでいる。

米国バスケットボール界にも思わぬ波紋が広がっている。きっかけは8日のさいたまスーパーアリーナでの米プロバスケットボールNBAオープン戦に臨んだヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャー、モーリー氏の発言だ。香港問題に関し「自由のために闘おう。香港とともに立ち上がろう」とツイートしたことに、中国側が猛烈に反発したのだ。NBAが開催する試合の中国国内でのテレビ中継や関連人気グッズの販売中止が相次いでいる。

NBAの試合中継は、のべ5億人の中国人ファンが視聴するといわれるほど中国で人気がある。本場である米国人ファンに匹敵する規模だ。習近平・国家主席も就任前に米ロサンゼルスでバスケットボールを観戦している。中国での放映権には5年契約で1500億円相当が支払われている。試合中継がなくなれば中国人ファンからブーイングが起きても不思議ではない。

渦中のモーリー氏は、その後「誰も傷つけるつもりはなかった」と謝罪した。NBAは「モーリー氏のツイートはNBAを代表するものではない」と関与せずの立場をとった。

問題はここから米国内に跳ね返ってきた。謝罪発言に「人権より金銭的利益を優先させるのか」との批判が「超党派」で噴出したのだ。米国民の愛国心も刺激されている。NBAはこれまで選手の政治的発言を容認してきたので、ネット上では「偽善的」などの批判が飛び交う。

そもそも米国企業が利益優先で中国の圧力に屈し、謝罪する事例が頻繁に起きていた。衣料品のギャップ、宝飾品のティファニー、高級革製品「コーチ」を抱えるタペストリー、空運のデルタ航空、ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルなどだ。それゆえ問題の余波が米中通商摩擦にも及びかねない情勢になっている。

米中貿易協議の落としどころには、米トランプ大統領も慎重にならざるを得ない。大統領選の前哨戦が本格化する来年早々、形だけでも米中合意という切り札を出すのが得策だろう。それまでは、強硬な発言とその軟化を繰り返して時間稼ぎする意図も透ける。

一方、選挙という縛りがない長期政権である中国側は、トランプ氏の弾劾問題の行方を見極めつつ交渉に臨む余裕がある。

投資家の間では、米中の次の一手を読みかねて当面はポートフォリオ(運用資産)全体のリスクを減らして見守る姿勢が強まってきた。米国株を対象とする変動性指数で「恐怖指数」と呼ばれるVIXは、再び警戒水域とされる20の大台を突破した。「10月は荒れる」との経験則も重なり、市場は身構えている。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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