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ミサイル警報を受けたらどう動くか 心構えを再確認

2017/8/29 10:29
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 北朝鮮が29日朝、通告なしに日本列島越えの弾道ミサイル発射を実施したことを受け、日本政府は全国瞬時警報システム(Jアラート)などを通じて北海道、東北、北関東、信越の12の道県の住民に警報を発した。防災行政無線や緊急速報メールなどで早朝に突然、警報を受け取り、驚いた人も多いことだろう。ミサイル警報を受け取った場合、どう行動すればよいか、平時においては何に留意したらよいかなどをこの機会に考えてみる。

警報発令時はとにかく身を伏せる(写真は7月14日、富山県高岡市内でのミサイル避難訓練で窓から離れて固まって身を伏せる小学生たち)

 北朝鮮の弾道ミサイルが発射されると、直後に米軍の早期警戒衛星が探知。米軍や自衛隊のレーダーが軌道を追跡・計算し始めると同時に、日本政府はJアラートなどで国民に警報を発し避難を呼びかける。この間、発射から2~3分が経過しており、ミサイルが日本に着弾する場合、国民に残されている時間は長くて4~5分ということになる。

 今朝の発射は早朝だったので、家の中にいた人が多かっただろう。政府の内閣官房は「国民保護ポータルサイト」で、屋内にいる場合の対処法として「窓から離れるか、窓のない部屋に移動する」としている。ミサイルの弾頭が核であってもなくても、着弾地に近い場所にいる場合、閃光(せんこう)や爆風が来る。このため、政府が今年に入って各地で実施しているミサイル避難訓練では、警報を受けたらすばやく窓とカーテンを閉めて身を伏せたり、窓のない部屋に入ってしゃがんだ姿勢で頭部を守ったりするよう推奨している。

 国民保護ポータルサイトは、屋外にいる場合は「できる限り頑丈な建物や地下に避難する」、建物がない場合は「物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守る」としている。いずれも閃光・爆風対策だ。

 都市部で通勤途上などの場合は、近くに地下街や地下鉄の駅などがあれば速やかに入ることが望ましい。内閣官房と総務省消防庁は7月、富山県高岡市で初めて地下施設に避難することをミサイル避難の訓練メニューに組み込んだ。1945年8月、米軍が広島に原爆を投下した際、爆心地に近い日銀広島支店にいた職員がたまたま地下階にいて助かった事例もある。

 津波の時と同様に大切なのは、「どうせ大したことはないだろう」といった根拠の薄い楽観論にたって積極的な避難行動をとらない「正常性バイアス」に陥らないことだ。国や関係自治体は、今回のミサイル警報発令を受けた12の道県の住民が実際にどのような反応や行動を示したかを早急に検証し、必要であれば避難の呼びかけ方法を改善する必要がある。

 政府は北朝鮮のミサイルによる威嚇が相次いだことを受け、今年3月に秋田県男鹿市で初のミサイル避難訓練を試みたのを手始めに、全国の自治体で訓練を実施。今年秋から冬にかけても各地で国との共同訓練や自治体単独の訓練が計画されている。

 ミサイル避難は、即座に対応が必要という点で津波発生時と似ている一方、高台ではなく建物や地下への避難が求められるところが津波とは異なる。訓練を一度でも実施すれば、自治体職員はより現実的に対処法を学び、住民を避難へと誘導できる。住民も訓練に参加し、対処法を体で覚えることが望ましい。

 ただ自治体の中には、ミサイル避難訓練に消極的なところもある。日本北部のある自治体には大規模な地下街があり、国がここでの訓練実施を打診したが、自治体側が消極的で訓練は早々に立ち消えになってしまった。人口の密集する別の自治体にも国から打診がいったが、逆に過疎地での訓練を逆提案してきたという。それぞれの自治体の消極的な姿勢の理由は定かではないが、「ミサイル避難訓練は危機をあおる」という一部の声を気にしている可能性も考えられる。

 とはいえ、危機をあおっているのは北朝鮮である。訓練という「正当防衛行動」をやめて日本が脅しに弱い状態でい続ければ、それだけ北朝鮮に有利となる。「ミサイル避難訓練は危機をあおる」論は、国民の命を守ることにブレーキをかけようとする奇妙な論理である。

 中・長期的には、既存の地下施設を改良したり、新たな地下施設をつくったりする取り組みも重要だ。ある日本の建設大手の関係者に聞くと「核シェルターの建設は今の技術で十分可能だ」との返事が返ってきた。普及させるには、建物の容積率を緩和したり、冷戦時代に旧西ドイツがやっていたように税制優遇措置を設けたりすることがカギになりそうだ。

 北朝鮮を変えることはできなくても日本は変われる。避難訓練や避難施設の準備を通じ、国民の命を守れる日本をつくりたいものである。(編集委員 高坂哲郎)

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