豪首相「当面は市場の不安定さ続く」 英のEU離脱で
【シドニー=高橋香織】オーストラリアのターンブル首相は英国の欧州連合(EU)離脱に関し24日、記者会見し「当面は市場の不安定さが続く」との見通しを示した。英国民投票の結果を受けて同日、シドニー外国為替市場で豪ドルやニュージーランドドルは米ドルに対して大幅に下落した。
ターンブル首相は「国民は市場の動揺を懸念している。しかし、豪経済は強靱(きょうじん)で、これまでも世界的な危機をうまくしのいできた」と語った。豪州は英連邦の一員で、英国からの移民は今も全体の12%とニュージーランド(17%)に次いで多い。資源大手BHPビリトンやリオ・ティントは英豪の両国で上場しており、経済での結びつきが深い。英国との双方向の貿易額は2015年に243億豪ドルと、7番目の貿易相手国となっている。
ターンブル首相は「今後も英国との関係は緊密で前向きなものであり続ける」と述べた。一方、豪州がEUとの間で進めている自由貿易協定(FTA)交渉への影響はないとの見方を示した。
豪州は英国の植民地として出発した歴史を持つが、近年はアジアとの連携を深めてきた。最大の貿易相手国は中国で、双方向の貿易額は1555億豪ドルと英国との貿易額の6倍に上る。野党・労働党で影の財務相を務めるボーウェン氏は「英豪の関係は、かつてほど密接ではなくなっている」と述べ、国民に冷静な対応を呼び掛けた。
豪州は7月2日の総選挙を控え、選挙戦のまっただ中にある。ボーウェン影の財務相は「政争を繰り広げている場合ではない」と述べ、欧州発の激震に与野党が一致して対処する姿勢を強調した。