貿易自由化、有志国の交渉も難航 サービス分野は年内合意断念

2016/11/23 6:54
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【ジュネーブ=原克彦】世界貿易機関(WTO)で分野ごとに自由化を促す有志国の交渉が難航している。新サービス貿易協定(TiSA)は参加国が予定していた年内の合意を断念した。12月上旬の閣僚会合で合意を目指す環境物品協定(EGA)も各国の主張には隔たりが大きい。米国の政権交代後はさらに交渉が難しくなるとみられ、完全に頓挫する可能性も出てきた。

有志国の協議はWTO加盟国の全会一致が必要な多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)に対し、自由化に積極的な国・地域だけで進められる利点がある。その分野で参加国の貿易が世界の大半を占めれば、事実上の世界ルールになる。

サービス分野を対象とするTiSA交渉には日米欧など50カ国・地域が参加している。事務レベル協議で21日までに年内の決着は困難と判断し、12月5日からを予定していた閣僚会議の中止を決めた。

ネットサービスの提供に伴う個人情報保護やデータ移転の規制について欧州連合(EU)内の意見がまとまらなかった。米国が海運業の自由化を拒んでいることなども障壁になったもようだ。欧州の交渉筋は「環大西洋貿易投資協定(TTIP)の停滞もあり、先にTiSAで譲歩するのは難しい」という。

一方、2014年に始めたEGA交渉は日米欧や中韓、トルコなど44カ国・地域が協議する。環境保護に役立つ製品の関税を撤廃し、温暖化や大気汚染を防ぐ狙いもある。候補には太陽光パネルや水力発電設備など約300品目が入っている。合意すれば輸出促進効果は世界で1190億ドル(約13兆円)にのぼるとの試算もある。

ただ、対象品目では多くの対立が残る。例えば中国が輸出強化に向け自転車を含めるよう求めるのに対し、域内に有力メーカーを擁するEUは強く反対。カナダなどは木材を加えるよう主張するが、輸入の急増を抑えたい日本は反発している。

同協定は対象分野に占める参加国の貿易額が世界全体の一定の割合に達したら、非参加国も関税撤廃の恩恵を受けられるようにする方針だ。だが中国は交渉に加わっていないインドが後から台頭することを警戒し、こうした条件の設定に難色を示している。

「米国がトランプ政権下で貿易自由化を進めるのは難しい、との見解は参加国に共通する」(交渉関係者)。このためEGAについては合意が後に破棄されるリスクがあっても、年内に交渉を終えようという機運が高まる可能性もある。

WTOでは15年に日米欧中韓など53カ国・地域がデジタル製品の関税を撤廃する情報技術協定(ITA)で対象品目を大幅に増やす新協定に合意した。主要国はこうした「プルリ交渉」で可能な分野から自由化を進める考えだったが、保護主義的な通商政策を掲げるトランプ次期米大統領の就任は逆風になるとみられる。

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