FRB議長会見、一問一答

2015/9/18付
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米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は17日、事実上のゼロ金利政策を維持することを決めた連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見し、政策決定の理由などを説明した。会見でのやりとりの要旨は以下の通り。

――世界の経済状況によっては、利上げまでに相当時間がかかる可能性もあるのか。

FOMCのメンバーの大半が(政策金利である)FF(フェデラルファンド)金利を今年末までに引き上げると予想し、4人は利上げが来年以降と予測している。先行きの不透明さは常にあることで、完全に払拭されることはないだろう。世界経済と金融市場の動向について、米国への影響を精査するためにはもう少し時間が必要と考える。

物価見通しはこれまでよりやや軟化した。原油価格の下落とドル高が近い将来の物価上昇率への重荷となっている。この状況を踏まえ、雇用情勢の一段の改善が物価上昇率の2%への上昇に中期的につながっていくかどうかを注視したい。

――10月のFOMCでは記者会見は予定されていないが、利上げ実施の可能性のある会合の一つと位置づけていいのか。

すべてのFOMCで金融政策の変更ができる。仮に10月に利上げに踏み切る場合には、記者会見を開催するだろう。米国内経済は堅調であり、需要は着実に拡大している。雇用情勢も改善基調が続いている。今後、世界の金融市場の状況を注視しながら、国内景気の拡大が続くことにより、物価上昇率が2%に戻るという確信が得られれば利上げに踏み切れる。

――利上げに批判的な意見はFOMCにどう影響したか。

エコノミストや利害関係者から多くの意見をもらった。異なる意見の表明は貴重なことだと受け止めている。しかし、金融政策を決めるのは我々FOMCメンバーである。これまで改善に遅れの目立った労働参加率も上昇基調となっている。インフレと雇用情勢の両方が完全に目標に達するのを待って利上げをするということはしたくない。金融政策の効果が表れるのには時間差があるからだ。

――前回のFOMCから2カ月の間にインフレ目標のゴールが近づいたのか遠のいたのか。

前回と今回のFOMCの間に景気に対する我々の自信が揺らいだとはみていない。物価上昇への重荷となっている原油価格の下落とドル高の影響は一時的なものとみている。中期的には2%の物価上昇率目標に達すると我々は予想している。雇用情勢の改善が続き、完全雇用状態になれば物価上昇にもつながる。我々は物価が目標に達するという「期待」だけでなく、かなりの「確信」を持てるようにしたい。

例えば賃金上昇率の低下がインフレ期待にどう影響するかを測るのは難しく、米国債や物価連動国債の流動性、あるいはその他のリスクプレミアムに関連してインフレ期待が下がることもある。こうした不透明な部分に着目し、雇用情勢全体の改善についてもう少し自信を持ちたい。

――失業率が大きく低下しても物価上昇率は2%の目標に達しないのは、近年のFRBの政策が景気の回復に十分機能しなかったためでは。

ゼロ金利政策、景気・金利見通しの発表、量的緩和と、我々は景気浮揚のためにできる限りのことをやってきた。その結果、失業率はFOMCメンバーの目標水準に近づいた。物価上昇率が2%の目標に達するのに2018年までかかると予想するのは、輸入価格とエネルギー価格の上昇にかなりの時間がかかるからだ。ただ、雇用情勢の改善が続き、失業率が目標よりもさらに低下すれば、物価上昇率の目標に予想よりも早く達することもあるかもしれない。

物価上昇率の適正な制御はFRBの信頼に関わることであり、現在の政策により、中期的に2%の物価上昇率目標を達成できると信じている。

■中国と新興国に注目

――物価上昇率についてどう考えるか。

「2%というのは目安で、我々がその近辺であってほしいと考える水準だ。我々は物価上昇率を2%超の水準に押し上げようとしているわけではないし(2%が)上限というわけでもない」

「ただ、政策の効果が出てくるのには時間がかかる。物価上昇率が2%程度に戻るまで待っていたら、失業率はFRBが目安とする水準を大幅に下回ってしまうだろう。そのため我々は2%という目安を(将来に)見越した状態で、非常に緩和的な政策を縮小し始めることになる。実体経済を混乱させるような政策は好ましくない」

――今回、利上げに踏み切らなかった理由は。

「世界経済の不確実性に関する様々な材料を慎重に精査するために、我々は集まっている。ただ最終的に、我々は雇用の最大化と物価上昇率を2%程度に安定させるという2つに焦点を置いている。世界経済は不確実な点が多い。経済や金融市場が我々の目標達成にどんな影響を及ぼすかという点を自問している」

――米国外の懸念材料は何か。

「世界の重要地域はすべて動向を注視している。特に中国と新興国に注目している。中国経済の減速そのものは、大きな驚きではない。問題は、予想と比べて大幅に減速するリスクがあるか、ということだ」

「8月の金融市場の動向も、中国経済の下振れや政策対応への懸念を反映したのだろう。(中国経済の懸念が強まる前に)原油価格の下落もあった。原油価格の下落は産油国の新興国や、米国の重要な貿易相手国であるカナダなどの経済に大きな影響を及ぼした。その結果、資源国から多大な資本が流出し(資源国の)通貨を押し下げもした」

「焦点は、中国を含む新興国の状況が米国にどう波及するかということだ。我々は(株式などの)相場の騰落に反応すべきではないと考えている。ただ、その市場混乱の原因を考えるのは我々の義務であり、世界経済の懸念は市場を動かす要因となっている。株式相場の下落やドル高、リスク資産の利回り上昇などをみると、金融市場はやや引き締まったようだ。とはいえ米国は順調だ。雇用創出のペースも顕著で、内需も堅調だ。それらと米国外の懸念材料とを踏まえ、総合的に判断しようとしている」

――マイナス金利の可能性も議論されたのか。

「マイナス金利(の導入)は、我々の政策の主要な選択肢の1つではなかった。物価上昇の弱さなどを懸念するメンバーが、マイナス金利導入による追加緩和を考えたが、今回の会合では議論していない。ただし、米経済の状態が、私を含む大半のメンバーの想像を大幅に上回って悪化した場合は、追加緩和へ向けて、あらゆる方策を検討する」

――年内に利上げする可能性に変化はあるか。

「私個人の見解を述べるのは控える。(これまでに)米経済がどう変化すれば年内の利上げが必要になるかといったFOMCメンバーの見解を示してきた。FOMCのメンバーが色々な材料を精査した末の見解だ」

「8月の市場混乱の主因は世界経済の先行き懸念だったと理解している。米金融政策が不透明で、本日の政策決定に非常に大きな注目を集めているのも認識している。我々は最善の分析をしようとし、見解を交わし、政策を決定している」

■住宅市場の回復予想

――米国の金融政策がドル相場に影響を与えていると考えているか。

「米国の金融政策は議会に与えられた目標を達成する試みに直結している。一般的に金融政策を引き締めて利上げをすると、それが実際に起きた時でも(利上げ)観測が高まった時にも、国際的な金利差が資本の流れを引き起こし、為替レートに影響を与えるものだ」

「したがって、金融政策はしばしば為替レートにいくらかの影響を与える。私の考えではこれは金融政策の働きの中で主たるものではない。数ある金融政策の作用の1つだ。しかし、為替レートにいくらかの影響を与えるのは事実で、もちろん我々はそのことを考慮する必要がある」

――今後利上げに踏み切っても、住宅市場の回復は続くか。

「我々は住宅市場のさらなる回復を予想している。住宅着工件数は雇用が生み出されている経済環境下でまだまだ潜在的な買い手がいることを示す低レベルにある。依然として(家族などと)同居している人もたくさんいる。住宅に対する需要は今後も強く、労働市場と賃金の伸びが改善するにつれて、(人々は)徐々に実際に家を買っていくだろう」

「我々が住宅市場をあてにしているかという点では、住宅市場は今では経済のごく小さなセクターにすぎず、私自身の米経済の回復が続くという見方のカギとなる要素ではない。あくまでも補助的な役割だ。個人消費が(経済回復の)主たる要因だと考えている」

「しかし、私は住宅市場の改善を今後も期待している。そして、利上げにあたっては我々は短期金利を少しずつ時間をかけて緩やかに上げていくつもりで、これはすでに長期金利にある程度織り込まれている。一方で、時が来て、我々がゼロ金利政策を解除する時には、長期金利がいくらか上昇するのは自然なことであり、もちろん住宅市場が住宅ローン金利に対して敏感であることも理解している。これは重要な要素であり、もちろん政策の適切な道筋を考える上で考慮に入れている」

――低金利は裕福な人の恩恵が大きく、貧富の差が拡大するという意見がある。低金利政策を通じて、FRBが貧富の差を広げたと思うか。

「そのようには考えていない。金利が資産価格に影響を与えるのは事実だが、負債と債務のバランスシートを通じて複雑に影響を及ぼす。私としては、緩和的な金融政策がもたらす効果は、主に人々を働く場に戻すことだと考えている」

「収入格差は最も弱い立場の人々を痛めつける高い失業率と弱い労働市場という環境において悪化するものだ。人々に仕事を取り戻し、労働市場が改善していくことは、弱者に対してとても好ましい影響を与えることであり、収入格差を広げるようなものではない」

「金融政策の様々なやり方の中で、どの部分が格差に影響を与えるかということを考えようとする研究が最近もたくさんなされている。最近の研究では、FRBの金融政策は収入格差を広げていないという結論が出ている」

――政府機関が閉鎖される可能性が出ていることは、今日の会合に影響したか。立法府に対して言いたいことはあるか。

「このことは我々の決断に何の影響も与えていない。歳出法案を通過させ、政府が債務上限を処理し、支払いをできるようにすることは議会の責任だ」

「経済は見事に回復し進展してきている中で、議会がその進展を脅かすような動きを見せている。これは不運なことでしかない。これは議会の仕事だ。議会は我々に中期的な経済の見通しをまとめ、それに基づいて適切な金融政策を実施するように求めている。我々は過去ずっとそうしてきたし、今後もそうしていくだろう」

――FRBは金融緩和に伴い拡大したバランスシートを、いつ縮小し始めるのか。

「7月の会合の議事要旨の中にもあるように、これまでも我々は再投資政策について議論してきた。我々の正常化の基本方針は、FF金利を上げるまでは再投資を減らすこともやめることもしないというものだ。この方針の下では、適切なタイミングは経済や金融の状況とそれを我々がどう評価するかによって決まる。そしてその手引きは正確であり続ける。これ以上説明できることはないが、正常化のプロセスに入った後にバランスシートの縮小を始めるという決まりだけは確かだ」

「バランスシートの縮小を遅らせているということは、我々の議論の中では大きな問題ではない。しかし、確かに利上げを遅らせれば、バランスシートを縮小させるタイミングも遅らせていることになる。今後も適切なタイミングについて議論を続けていくしかなく、これ以上の決定は今のところない」

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