大ヒットゲーム「マインクラフト」の開発者が今年6月、自分の会社を引き取ってくれる人はいないだろうかとツイッターでつぶやいた時には、そのわずか3カ月後に米マイクロソフトがその権利を25億ドル(約2680億円)で買いに来るなどとは、とても予想できなかっただろう。
■束縛を嫌い会社を去る創業者たち
マインクラフトの開発元であるスウェーデンのゲーム会社、モージャンを5年前に立ち上げたマルクス・パッソン氏は、むしろ「ノッチ」という愛称の方で知られている有名ゲーム開発者だ。「正しいことをしようとして人の恨みを買うのは好きじゃない」。ツイッターでは、こうも発言していた。
モージャンはこの5年間で1億人のユーザーを獲得して5億ドル近い売上高を得るに至った。昔ながらのやり方に従うのを好まないパッソン氏は、そういう企業を経営する責任に四苦八苦していた。
今回の取引により、パッソン氏と2人の共同会社所有者のヤーコプ・ポルセル氏、最高経営責任者(CEO)カール・マンネ氏は大金を受け取ってモージャンを去り、同社とこのゲームに入れ込んでいるユーザーたちの命運はマイクロソフトの手に委ねられることになる。
「私は象徴になんかなりたくない。自分では理解できず、取り組みたくもないのにずっとつきまとってくる巨大なものの責任など負いたくない」。パッソン氏は買収成立後に投稿したブログの中でこう語った。「私はCEOじゃない。ツイッターで意見を言うのが好きなオタクプログラマーだ」
一方、マイクロソフトには正反対の課題が突きつけられている。マインクラフトはゾンビと戦ったり都市を造ったりするゲームで、遊び方もゴールも特に決まっていない自由な空間だ。そのような空間から「大企業」の文化を持つマイクロソフトが、このゲームの魅力を生み出している遊び心を損なうことなく価値を引き出すにはどうすればよいのか、という難題があるのだ。
最近は、アップルやグーグルといったかっこいいライバル会社の新製品投入が近づくと消費者が騒ぎ出す。ところが、マイクロソフトではそういうことがなかなかない。マインクラフトの買収は、マイクロソフトのブランドを強化する好機になる。ゲーム機の「Xbox(エックスボックス)」だけでなく、パソコンやスマートフォンなど他のプラットフォーム(むしろこちらのほうがマインクラフト向きかもしれない)も同様な効果が期待できるだろう。