東芝迷走の1日 「不適切」の影再び

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2017/2/14 13:49 (2017/2/14 20:15更新)
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東芝は14日、傘下の米原子力大手ウエスチングハウス(WH)による米原子力サービス会社の買収を巡り、「内部統制の不備を示唆する内部通報があった」ことを明らかにした。新たな不適切行為の疑いが浮上し、昼すぎからは決算発表の延期を巡って金融市場に動揺も広がった。東芝が夕方にやっと説明した2017年3月期の業績予想では、原子力事業の損失などで連結最終損益が3900億円の赤字になる見通し。このままでは3月末も債務超過を解消できない。14日の東芝を追う。

記者会見に臨む東芝の綱川社長(14日午後、東京都港区)

記者会見に臨む東芝の綱川社長(14日午後、東京都港区)

【午後6時30分すぎ】

「延期をせざるを得ない事象が起こった。ご迷惑をおかけし心よりおわび申し上げる」

東京ベイエリアにそびえる東芝本社。綱川智社長は記者会見の席上、決算発表の遅れについて陳謝した。

この日の昼、東芝は2016年4~12月期決算の発表資料を予定通りに公開できず、記者会見の時間も遅れに遅れた。記者会見に先立つ午後5時すぎに開示した決算資料の数字も「仮」でしかない。しかも、そこには異例の注意書きが並んでいた。

「当社の責任において当社としての見通し及び見解を記述したものです」

「財務数値は独立監査人によるレビュー手続き中であり、大きく修正される可能性があります」

この日に発表できた決算の内容は、監査法人の「お墨付き」なしの数字だ。監査証明が必要な四半期報告書は提出できず、東芝は提出期限を3月14日に延期した。つまり、今日時点の数字は全面的には信用できないかもしれないのだ。

■「財務制限条項抵触の恐れがないか」

2017年3月期に原子力事業ののれんの減損損失を7125億円計上し、連結最終損益は3900億円の赤字に。その結果、3月末に1500億円の債務超過に陥る――。

東芝は14日、こうした窮状をとりあえず説明したが、これ以上、傷口は広がらずに済むのだろうか。監査が終わらなかった原因である不適切行為への疑念は晴れるのか。それとも、東芝を今以上の危機に追いつめていくのか。市場関係者からは東芝の先行きをめぐる厳しい声が相次いでいる。

「融資の返済などを銀行が要求する財務制限条項(コベナンツ)に抵触するような事項が浮上しているのではないか。四半期報告書の提出延期は、そんな疑心暗鬼を増幅させかねない」

BNPパリバ証券の中空麻奈投資調査本部長は、東芝と取引金融機関との関係を心配している。銀行団は2月末までは同条項を行使せずに協調融資を続ける方針だが、ここで新たな問題が浮上すれば支援交渉が振り出しに戻る可能性もゼロではない。

■「上場廃止リスク、高まりかねない」

そもそも、中空氏は今回の決算発表で「巨額損失の原因や経営陣らの背任行為の有無、金融支援や半導体事業の分社化の進捗など様々な懸念について明確な説明があるかどうかに注目していた」という。しかし、発表延期で東芝を巡る不透明感は晴れないまま。それどころか、WHを巡る新たな疑念が浮上してしまった。

東芝は2015年に会計不祥事が発覚した後、企業統治のあり方を見直したはず。楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは、「(不適切な行為が取り沙汰されている)WHによる米原子力サービス会社買収は、企業統治の改善に努力するさなかに決められた。それにもかかわらず、今回のような事態を招いてしまった。上場企業としての適切な管理体制を疑わざるを得ない」と話している。

今回、延長した期限である3月14日の翌15日以降には、東芝は東京証券取引所に内部管理体制確認書を提出する必要がある。ここで内部管理体制の改善が認められなければ特設注意市場銘柄の指定解除を受けられないからだ。最悪の場合は「上場廃止のリスクが高まりかねない」(ドルトン・キャピタル・ジャパンの松本史雄シニアファンドマネジャー)という。

■半導体メモリーは「過半譲渡」も

このままなら、東芝は3月末に債務超過に陥る。債務超過を確実に回避するため、14日には、半導体メモリー事業の分社・一部売却の計画を修正することも明らかにした。

東芝は分社で発足する半導体メモリー会社について、これまで「外部資本の受け入れは20%未満」としていたが、「マジョリティー(過半数)譲渡を含む外部資本導入を検討する」という姿勢に転じた。主導権を渡してでも、確実に資本を増やしたいのだ。東芝は、なりふり構っていられなくなっている。

ドル箱である半導体メモリー事業の売却は間に合い、債務超過は回避できるのか。経営幹部による不適切な行為の疑念を払拭し、期限までに四半期報告書を提出できるのか。そして、「上場企業」であり続けるための内部統制の問題で市場の理解を得られるのか。

いずれも3月がヤマ場といっていい。東芝には3つのデッドラインが迫っている。

(富田美緒、浜美佐)

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