フェイスブック、写真「ナパーム弾の少女」削除撤回
【シリコンバレー=小川義也】交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックは10日までに、ベトナム戦争でナパーム弾の攻撃を受けて逃げる裸の少女の報道写真を「児童ポルノ」に該当するとして削除していた措置を撤回した。この措置を巡っては、ノルウェーなどで「権利の乱用」だとして批判が集まっていた。
この写真はAP通信のカメラマン、ニック・ウト氏が1972年に撮影したもので、ベトナム戦争を代表する写真の一つとして同氏はピュリツァー賞を受賞している。
ノルウェー人作家のトム・エーゲラン氏が先月、戦争写真に関する投稿でこの写真を使用したところ、フェイスブックが同社のコミュニティ規定に違反するとして削除したのが発端だった。この「検閲」に反発した多くの人々が同じ写真を投稿したり、シェアしたりしたが、フェイスブック側は写真を削除し続けた。投稿者にはノルウェーのソルベルグ首相も含まれていた。
ノルウェー最大の新聞アフテンポステンのイギル・ハンセン編集長は8日、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)に宛てた公開書簡で、ザッカーバーグ氏を「世界で最も権力のある編集者」と呼んだ上で、「あなたはその権力を乱用している」と批判した。
フェイスブックは9日、「裸の子どもが写った画像は通常、当社のコミュニティ規定に反するとみなされ、一部の国では児童ポルノに該当する」とした上で、この写真については「その歴史と世界的な重要性を認める」として削除措置を撤回すると説明した。