食と農 第2部

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熱々の思い「ご飯に恋する」人たち 渋谷でトークイベント
日本人とコメ(4)

2014/10/20 2:00
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東京都渋谷区で10月3日夜、「デザインのチカラでおコメの未来に何ができるか」をテーマにした「ごはんトーク」が開かれた。10月25、26日に開かれる「表参道ごはんフェス」の派生イベントで、約30人が参加した。おコメに関わっている人たちがコメの魅力を伝えるために取り組んでいることを語った。

「ごはんトーク」は山形で農場を運営する女性や、おにぎり協会の代表理事らが講師となった。約30人が参加した(10月3日、東京都渋谷区)

「ごはんトーク」は山形で農場を運営する女性や、おにぎり協会の代表理事らが講師となった。約30人が参加した(10月3日、東京都渋谷区)

■「ご飯に恋する」

「表参道ごはんフェス」実行委員代表の平井巧氏(トータルフードプロデューサー、東京農大非常勤講師)

「ごはんフェスは今回で2回目。今年の4月に1回目をやった。あえて忙しい春と秋、田植えと収穫の時期に、表参道でやることで注目度を高めたい。10月25、26日のごはんフェスのテーマは『ご飯に恋する』だ。前回は表参道や原宿の会場でワークショップや食べるイベントを開いた。実際に原宿のお米屋さんで精米や配達を体験してもらった。いろんな切り口で楽しんでもらうよう、たくさんのプログラムを用意した」

「おコメに興味がなかったり、関心が薄れてきた人も多い。ただ、おコメを食べて、食べてというだけでは消費者に響かない。コミュニケーションをデザインすることで、コメ離れが進む日本の未来に一石を投じられないかと思っている。ただ、過去からヒントをもらって古い食習慣を取り戻すことはしたくない。新しいお米のあり方をつくるという視点を持つべきだ」

■農業の可能性は無限大

山形ガールズ農場の高橋菜穂子氏

山形ガールズ農場の高橋菜穂子さん

山形ガールズ農場の高橋菜穂子さん

「山形ガールズ農場を運営している。若い女性が元気に働いているのがこの農場の特徴だ。農業を志したのは大学の教育実習の時だ。子どもたちがごはんを食べている姿をみて農業の価値を知った。ただ、10年前に農業を始めたときには男性の仕事のイメージが強く、周囲から『なんでわざわざやるの? もったいない』とかいわれた。特に農業をやっている人から言われてすごく悲しかったが、農業という仕事にもう一度誇り持って、やっていけるんじゃないかと思った」

「ガールズ農場を始めたのは6年前で、ちょうど農業ブームのころだ。いまは5人でやっている。メンバーは2、3年で卒業して自分の地元で農業をやっている。現在は4期生くらい。これをホームページなどでどういうふうに見せていくかが、デザインだと思う。何を伝えたいか意識するだけで変わってくる」

「農業の可能性は無限大だと思う。

山形ガールズ農場が販売しているおコメ。2合サイズのパックにおコメの特徴が漢字一文字で書かれている

山形ガールズ農場が販売しているおコメ。2合サイズのパックにおコメの特徴が漢字一文字で書かれている

農場で生産したおコメやジュースはパッケージを工夫している。おコメは2合の小さな食べきりサイズ。四角い真空パックのパッケージに品種ごとの特徴を表す漢字一文字で書いてある。たとえばミルキークイーンは『粘』など。今月下旬には幼稚園児150人を集めた芋掘り大会を開く。それだけでビジネスになるわけではないが、そこからのお客さんとのつながりをつくっていきたい。(農場で働く)ガールズも募集中なので、関心のある方がいたら来てほしい」

■お客さんに働きかけを

ブランドマネージャーの長田敏希氏(東京農大非常勤講師)

クリエイティブディレクターの長田敏希氏

クリエイティブディレクターの長田敏希氏

「東京農大の非常勤講師として生徒と一緒に村の資源を有効活用した商品開発を1年かけてやっていくプロジェクトを現在、手掛けている。コメもそうだが、全体がレベルアップしており、単なる品質だけでは商品の差が出しづらくなっている。品質より、お客さんに対する情緒をつくり上げていく必要があると思っている。何を作るかの前に、なんでこの商品を作るのか。その商品の使命を考えていくことが必要だ」

「デザインは色や形を決めるというよりは、計画や設計まで領域が広がっている。いろんなところの接点に対してデザインという考え方を入れ込んでいく必要がある。例を挙げると、現在、石川県輪島市のコメ農家9社が集まったプロジェクトをやっている。9社が生産するコメとスーパーの最も安いコメ、ブランド米の代表である魚沼産コシヒカリの3種類を、農家さんにブラインドで食べ比べてもらった。結果、あまり自分たちのおコメが分からなかった。お客さんにも品質の差が分かりづらいことを認識してもらった。おぼろげなイメージの輪郭だけではお客さんに伝わりづらい。あらかじめ世界観やイメージを決めておいて商品化していくことが重要だ」

■変化を踏まえて商売を

東京都ごはん区(お米マイスター23区ネットワーク)の小池理雄氏(小池精米店=東京・渋谷)、本橋茂氏(本橋米店=東京・北)

「東京都ごはん区」のメンバー、本橋茂氏(左)と小池理雄氏

「東京都ごはん区」のメンバー、本橋茂氏(左)と小池理雄氏

「『東京都ごはん区』は都内の若きお米マイスターたちが、ごはんの新しい楽しみ方を提案すべく立ち上げたグループ。30キロのコメ袋を背負ったスーツ姿の7人が原宿を歩く写真を撮影し、ホームページなどで使っている。全国の産地からおいしいお米を探してお米の品質を見極めて販売している」

「農家ががんばっておコメを作っている。消費者もいろんなツールでおコメが買える。だが、コメ業界全体は沈んでいる。コメ屋さんの努力不足ではないか。イネ、コメ、ごはん、この3つをデザインで変えたい。コメはもともと配給制だった。この20年でどこでも買えるようになった。そこから初めて僕らは普通の商売人になった。この変化を踏まえて商売しないといけない」

■「おにぎり」を世界に

おにぎり協会の中村祐介代表理事

おにぎり協会の中村祐介代表理事

おにぎり協会の中村祐介代表理事

「おにぎりを絵に描くと一人一人、サイズや形が違う。実際に47都道府県に様々なおにぎりがある。お寿司やてんぷらは高級店が多く、文献化されているが、おにぎりは文献にされていない。職人もいない、興味深い食べ物だ。我々のミッションはおにぎりを世界に広めていくことと、日本でのおにぎりを再定義することだ。おにぎりは和食の根源。お寿司もおにぎりの一種で、おにぎりは何でも(具材として)入れられる。

「おにぎりを巡る問題もある。おにぎりはコメ、塩、海苔(のり)と具、水という5つの要素で構成されている。のりは日本の年間生産量が85億枚で、ほとんど日本国内で消費している。自由貿易協定(FTA)によって中国、韓国の安いのりが入ってくると、日本ののり業者が打撃を受けかねないという危機感を持っている。おにぎりの消費が増えればのりの消費も喚起できると期待されている」

トーク後の交流会では新潟コシヒカリを使ったおにぎりが振る舞われた

トーク後の交流会では新潟コシヒカリを使ったおにぎりが振る舞われた

「海外でも認知を高めていきたい。コミュニケーションをデザインすることで、『おにぎりってかっこいい。おもしろい』というふうに興味を持ってもらえればムーブメントになる。ミシュランで星を獲得している和食料理店に取材にいった。店の人がいっていたのは『おにぎりは冷めることを前提に料理していく食べ物』。そういうことを想定した料理は世界的にもあまり例がない。海外への情報発信も強化する。2020年の東京五輪の時には日本人より海外の人がおにぎりを食べているとおもしろい」

(村野孝直)

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