負担、県と折り合えず 名古屋市がアジア大会共催撤回
愛知県と名古屋市が共同で招致を目指していた2026年のアジア競技大会について、市は5日、立候補を取り下げると発表した。開催費用や負担割合についての考え方で県との溝が埋まらなかった。両者は今後も協議を続けていくとしているが、招致の成否に影響が出そうだ。
取り下げの理由として挙げたのは、県が近く公表するとみられていた開催構想に、費用や負担割合を盛り込まないと決めたこと。市民などへの説明責任が果たせなくなったとしている。
関係者によると市は県に対し、8月下旬までに開催構想を出すよう求めていた。市自体も大会経費850億円、県と市の負担割合を2対1とする案を示していたが、合意にたどり着けなかった。
一方県は、リオデジャネイロ五輪の影響で日本オリンピック委員会(JOC)やアジア・オリンピック評議会(OCA)との交渉が中断したため、即時の費用計画策定が難しいとの立場をとる。
メーンスタジアムとなる瑞穂陸上競技場(名古屋市)の整備を除いても、運営費や選手村・競技場の整備で1000億円規模の多額の費用が見込まれるため、負担割合などを巡って双方とも譲歩しにくい事情がある。
大村秀章県知事は同日夕、河村たかし市長と約40分会談した。終了後、大村知事は「今後も協議を続けていくことを確認した」と述べた。河村市長も「(交渉の)ドアは開いている」とした。
当初の予定では今月13日のJOC理事会で国内の立候補都市として正式に選定され、25日のOCA総会に臨むはずだった。県側は共催の可能性を探り続け、市側はOCA総会以降も交渉を続ける余地があるとの姿勢だが、折り合えたところで、共催を復活できるかどうかは不明だ。
両者の隔たりは多方面に波紋を広げている。JOCに立候補取り下げが伝わったのは5日午前。JOCの担当者は同日夕、「名古屋市には立候補取り下げの理由を詳しく聞きたい」と述べる一方、「県単独で立候補ができるかなど、OCAに問い合わせる」と語った。竹田恒和会長も「困惑している。詳細な状況が分からないので確認している」と述べた。
大会招致委員会の副会長を務める、中部経済連合会の豊田鐵郎会長は5日の記者会見で、名古屋市の立候補取り下げについて、市側から事前に説明などはなかったといい、「詳細が分からない」とした上で、「県と市が協力すれば景気の面からもプラスだ」との考えを示した。