2019年8月24日(土)

トヨタ「つながる車」 個人間カーシェアに布石
全乗用車に通信端末

2016/11/1 16:06
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トヨタ自動車は1日、4月に設立した社内カンパニー「コネクティッドカンパニー」の事業戦略を発表した。2020年までに日米で販売するほぼすべての乗用車に通信端末を標準搭載し、個人間のカーシェアリングなど成長分野に布石を打つ。戦略を読み解くカギはIT(情報技術)企業の攻勢に対する「焦燥」と、自動車の生産・販売に裏打ちされた「勝算」だ。

「トヨタは自動車を作って販売する会社であると同時に、移動を提供する企業になる。これは全社で共有している戦略だ」。トヨタが1日に都内で開いた説明会。終了後、記者団の質問に応じたカンパニーのプレジデント、友山茂樹専務役員はこう語った。

戦略は(1)全車のコネクテッド化、(2)新価値創造とビジネス変革、(3)新たなモビリティーサービスの創出――が柱だ。一部は公表済みだが、まず20年までに日米で販売するほぼすべての乗用車にデータ・コミュニケーション・モジュール(DCM)と呼ぶ通信端末を標準搭載してインターネットにつなぐ。

「毎年数百万人の顧客との接点を創出する会社になる」と友山専務役員。各地を走行する車両から集めたビッグデータを解析し、様々な活動に活用する。既に独自の交通情報の提供を進めており、事前に故障を検知してドライバーに警告することなども実現。製品の設計・開発にもビッグデータを活用し、ビジネス変革を目指すという。

加えてこの日の目玉として紹介したのが、シェア(共有)エコノミー分野の企業との協業だ。5月にライドシェア(相乗り)大手の米ウーバーテクノロジーズと提携しており、年内に米リース子会社を通じて相乗りに使う車両の提供を始める。個人間のカーシェアを提供する米ゲットアラウンドも協力する。

具体的にはスマートフォン(スマホ)で鍵の開け閉めなどを実施するための端末を独自開発し、来年1月から米国で実証試験を始める。端末はトヨタ車やレクサス車と無線通信する方式を採用しており、取りつけ作業の手間がない。トヨタはこうした端末や情報収集に使う機器などを外部に開放し、手数料収入を得ることを想定している。

米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の独オペルは15年6月にドイツで個人間のカーシェアを始めるなど、この分野の取り組みは欧州が先行する。移動(モビリティー)提供企業への脱皮も、米フォード・モーターが今年1月にいち早く宣言した。日本メーカーでは先行するトヨタも、世界に目を転じれば必ずしも先頭走者ではない。

「シェア分野のサービスが普及すると、自動車が売れなくなる」「DCMを標準搭載するとコストが上がる。どのように吸収するのか」――。この1年ほど、トヨタ社内では様々な意見が出た。必ずしも前向きではなかった社内のベクトルが整いつつある背景には、"外圧"がある。

「自動車はIT化が進み、ソフトの塊になりつつある。IT企業が参入するのは当然の流れだ」(友山専務役員)。米グーグルが自動運転車の開発に力を入れ、ライドシェアではウーバーや同業の米リフト、個人間カーシェアではトヨタが組んだゲットアラウンドや米トゥロ(旧リレーライド)などのサービスが人気だ。

米フロスト&サリバンによると、個人間カーシェアの米欧の利用者は14年には130万人だったが、25年は980万人に増える見通しだ。需要減退のリスクを語るよりも、「稼働率が上がることで買い替えサイクルの短期化が見込める」(友山専務役員)などプラスの面を見ないと流れから取り残されるとの危機感が強い。

焦燥が透けて見える一方、勝算もある。1日の説明会では自動車から吸い上げた異常データを解析して近所の販売店に円滑に誘導するデモンストレーションなどを見せた。「ここまで積み上げてきた信頼関係などの目に見えない資産が大切になってくる」。友山専務役員は説明会で強調した。

伝統的な製造業がサービスで稼ぐようになった事例としては米ゼネラル・エレクトリック(GE)などがある。航空機エンジンに取り付けたセンサーから集めたデータを活用した省エネ運航の支援サービスなどが有名だ。だがもちろん、流れに乗れなかった企業もある。トヨタも資産を宝の山に変えられるか、負の遺産を抱え込むことになるか。岐路に立っている。

(名古屋支社 奥平和行)

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