東北の公共建築物、木造化率で全国をリード 政投銀調査
日本政策投資銀行東北支店は22日、東北6県にある公共建築物の木造化・木質化状況をまとめた調査結果を発表した。公共建築物の木造化率は秋田が36.9%と全国1位だった。岩手が33.5%で2位、山形が29.9%と4位。森林資源が豊富にある東北が国産材を中心とした木材利用で全国をリード、市場を創出している様子がわかった。
全国930の市町村(東北は114)から集めた調査結果を集計した。地方別にみると木造化した公共建築物は東北6県が167件と、180件の北海道に次いで多かった。東北は全体の23%が図書館や公民館などで、20%は公営住宅だった。
公共建築物等木材利用促進法では都道府県や市町村に対して公共建築物に国産材を使う方針を定めるよう推奨している。方針を策定した市町村の割合は東北が94%と、全国の88%を上回った。
木造建築が必ずしもコスト高とはならない実態もわかった。東北の市町村が木造化を進めた理由は「コストやスケジュールで優位だった」が34%と、「法律に基づいて策定した方針に従うため」に次いで多かった。森林資源が豊富な東北では木材が他地域よりも安く手に入ることが背景にあると見られる。特に青森県の市町村でこうした回答が目立った。
自治体が建築物をつくるときは複数の建築会社が組んだジョイントベンチャー(JV)が受注する場合が多い。通常はJVが木材の調達から工事まで一貫して手掛ける。
一方、山形県南陽市は世界最大の木造コンサートホールとしてギネス認定された文化会館を建てる際、調達と工事を別々に発注した。国産材を大量に調達でき、事業費も把握しやすくなった。
政投銀は南陽市を公共建築物の木造化に成功した例として挙げている。ただ、調査ではこうした「分離発注方式の実績がない」ことを課題にあげた市町村は東北では29%にのぼった。
政投銀は「木材を使うことによる経済効果を明確化すべきだ」との提言をまとめた。コンクリートと比べた工期短縮や人件費の削減、木が温度・湿度を調節することで減らせる光熱費を測定・算出すべきだとした。また耐火技術の開発などを進めて、輸入木材に対して競争力のある国産材の市場を創出することが必要だとも提言した。