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被災地産業、芽吹きの時 水産加工の復活カギ

新年に考える 東日本大震災から5年

2011年3月11日の東日本大震災から5度目の新年を迎えた。被災地では復興が進んだと感じる風景が増えた一方で、復興の進捗が「遅過ぎる」「非効率」との指摘も多い。新シリーズでは震災から5年近くで得られた収穫、教訓、課題について多角的に検証する。初回は被災地の産業と生活再建の現状と問題点を探った。(文中敬称略)

「宮城県を世界初の新素材の発祥地にしたい」

東京都千代田区に本社を置くTBM社長の山崎敦義は、多賀城市役所で12月17日に開かれた立地協定式でこう抱負を述べた。

同社は震災後まもない11年8月に設立された。石灰石を主原料に紙やプラスチックの代替素材を開発し、市内の工業団地に66億円投じて量産工場を建設する。

新興企業にしては重い投資だが、これを可能にしたのが「津波立地補助金」だ。多賀城のような津波被災地に雇用創出などの要件を満たして進出すれば、投資額の最大半分(原発被災地なら4分の3)が補助される。国の産業復興策の柱の一つで、これまで512事業(計1998億円)が支給対象として採択された。

こうした手厚い産業支援策は震災後に続々と登場した。被災した地場企業を対象にしたのが「グループ補助金」だ。グループを結成して復興事業計画を立てた中小企業に対して、国と県が復旧費の最大4分の3の資金を支給する。岩手、宮城、福島の3県では15年11月末までに約9000の事業者が4400億円程度の補助金を受けた。

補助金申請は急減

ただ、震災から4年9カ月が経過し、各種補助金の支給を申請する企業は急減している。国や自治体の役割は資金援助で産業復興の素地を整える段階から、企業の成長を後押しする段階に入ったといえる。

本格的な復興に向けて国が特に力を注ぐのが水産加工業の育成だ。津波被害の大きい三陸沿岸の基幹産業であり、東北経済産業局長の守本憲弘は「水産加工業の復活なくして真の被災地復興はない」と強調する。

宮城県石巻市を例に挙げよう。犠牲者が三千数百人にのぼるなど震災被害が最大級だったが、市経済の現状は活況で、域内の有効求人倍率は15年11月で1.98倍。復興事業を背景に建設業の好調が続く。

しかし、製造業の実態を示す工業統計表を見ると心もとない。同市の14年の「製造品出荷額等」の数値は3056億円で震災前の10年より17%少ない。宮城県の14年の数値が、10年より10%多い3兆9452億円となったのとは対照的だ。

その主な原因は水産加工の低迷だ。このままでは復興事業が一段落して建設需要が減ると、地域経済は苦境に陥る。岩手県なども含め三陸沿岸の他の被災地も同様のリスクを抱える。

活路を探る動きはある。例えば、15年9月から国・自治体の関係者や地場企業、大手食品会社が集まって継続的に「水産加工業を主体とした地域活性化研究会」を開き、三陸沿岸を世界に通用する水産地にする方策などを議論している。

都市部に売り込め

個々の水産加工業者の間でも、震災前とは違う発想で事業に挑む動きが広がっている。石巻では地元6社が共同で「日高見の国」ブランドを立ち上げ、14年から輸出を拡大させている。

15年8月に新工場を稼働させた宮城県南三陸町のヤマウチは、年初から焼き魚を真空パックにしたチルド食品の包装工程を省力化する。人手不足の中で増産し、首都圏で拡販を狙う。

「震災後に商品開発やPRがいかに重要かが分かった」と話すのは岩手県宮古市の共和水産専務の鈴木良太。父である社長とともに補助金を活用して事業再建に取り組み、「イカ王子」などのブランドを育てた。売上高は震災前を上回る。

震災前から地域産業の研究のために三陸沿岸部をたびたび訪れてきた明星大教授の関満博は「三陸の水産加工業は成長産業」と常々語っている。良質の海産物を原料にした製品を都市部の富裕層らに販売して稼ぐケースは数多いという。

地の利を生かして経済活性化を目指す。被災地に限らず、地方創生に広く求められる視点である。

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