世田谷区、所有者所在不明の空き家民法規定で解体
東京都世田谷区は12日、民法の仕組みを使って所有者の所在がわからない空き家を解体したと発表した。都内では空き家対策特別措置法による行政代執行で空き家を取り壊す事例が葛飾区や品川区などで出てきているが、民法の仕組みを使った例は都内初だという。
特措法では所有者がわからない場合、略式代執行と呼ばれる手続きで空き家を解体する選択肢もある。今回同区は民法第25条に規定されている「不在者財産管理人」という仕組みを活用した。建物の解体や敷地売却などの手続きを管理人が一括して請け負う。自治体が建物を解体し、売却は別途手続きが必要な略式代執行に比べて迅速に行えるメリットがある。
不在者財産管理人の規定を活用するため区は利害関係人として4月、東京家庭裁判所に管理人選任を申し立てた。家裁は6月、弁護士を不在者財産管理人に選んだ。
管理人は7月3日、空き家を解体した。区はあらかじめ解体費用を家裁に納めていたが、敷地は隣接する住民が買い取る意向を示している。解体費用も住民が負担する方向で、区が納めた費用は返還される。
取り壊した空き家は北烏山地区にあり、73平方メートルの敷地に建つ述べ25平方メートルの木造平屋だった。同区が把握する空き家は417件。倒壊の恐れや景観を著しく損なう「特定空き家」は現在4件で、いずれも所有者の所在が把握できているという。
保坂展人区長は「私有財産にどこまで関与できるか考慮する必要はある」としたうえで、「同様の空き家が出てきた場合、街の安全や環境を考えれば同じ選択をするだろう」と話している。