豊洲盛り土問題 小池知事一問一答

東京都の小池百合子知事は1日の記者会見で、豊洲市場(東京・江東)の建物地下に土壌汚染対策の盛り土をしなかった問題を巡る第2次内部検証報告書を公表した。盛り土の代わりに地下空間を設けると決めた時期は建物の基本設計を始めた2010年11月から、実施設計が完了した13年2月までの期間と認定した。当時の中央卸売市場長だった岡田至氏(退職)と中西充副知事の2人のほか、建設担当の新市場整備部長ら部長級6人の計8人を責任者と特定した。主なやり取りは次の通り。
「豊洲市場の地下空間(の問題)は9月30日時点で一度報告した。いつ、誰が、どの時点で決定したのか、つまり盛り土をしないことに決めたのか、解明が不十分だった。都の職員自ら書類を精査し、問題の原因を究明するよう指示していた。報告の概要を説明すると、地下空間を設け、盛り土をしないことを決定したのは、設計段階と判断するのが妥当であると考えられる」
「まず2007年度から08年度にかけて開催されたのが専門家会議。08年7月に終了し、その1カ月後に技術会議が開かれる。2つの会議からは建物の下を含め、敷地全面に盛り土をすると提言をいただいた。その後、09年2月に新市場整備方針を策定した。その時点で敷地全面に盛り土することが都の方針として明確に定められた」
「問題の設計時期だが、まず基本設計は10年11月に起工が決定した。このころからモニタリング空間の認識があった。その後の設計会社との打ち合わせも精査したが、地下空間を設計会社に指示していたことが分かっている。全体に盛り土をすると決めていながら、基本設計の段階から都の決定とは違う方向に進んでいった。結果として11年6月に提出された基本設計の成果物には、建物下全体に地下空間が記載された断面図が添付されていた」
「基本設計が完了すると、実施設計に着手する。11年9月に起工決定が行われた。この実施設計の起工に大きな影響を及ぼしたと考えられるのは、11年8月に新市場整備部で開催された部課長級会議だ。この会議で地下にモニタリング空間を設置する方針を確認したと複数の当時の関係者が証言している。局の判断でこれが行われた。ここが『いつ』になる」
「それからいろいろとメモや会議録を精査したが、報告書では12年5月の段階で建物下に盛り土しないと最終的に確定したと判断される。13年2月に完了した実施設計の成果物には、地下空間のある断面図が提出された。これに基づいて建設工事が着手され、現在に至る」
「以上、申し上げた通り、基本設計から実施設計にかけて、全体に盛り土を敷くという整備方針に反し、地下空間を設けること、盛り土をしないことが固まっていった形跡が見られる。この間の市場長が2人、部長級の職員が6人。計8人が盛り土をしないことを決めた実務上の決定者、また事実を知り得る立場にあった者だと判断できる」
「関係した職員の責任を明確にする必要がある。懲戒処分の手続きを速やかに進めるよう指示した。厳正に対処したい。これを契機に納税者や都民に対する責任を痛感してもらい、信頼できる都政づくりにともに頑張りたい」
――今回の報告書を読んでの評価は。
「これまでにない新たな資料や関係者から得た証言で『いつ、どこで、誰が』という部分はかなり絞り込まれた。これまで『空気のような問題』と言っていたが、いつ、どこで、誰がについてはかなり絞り込みができた」
――責任者8人のポスト名を挙げた。都庁OBを含めどんな処分を考えているか。
「(責任者として)8人のポストを挙げたが、すでに退任された方もおられ、公務員としての処分の対象にならない。しかし、何らかの形で責任を明確にしてもらえるよう方法を検討する」
「何のための処分かを明らかにしたい。1つは(都が策定した新市場の)整備方針に反し、そして必要な手続きを踏まなかった。つまり、盛り土なしで地下にモニタリング空間の設置を決めた。もう1つは都議会に事実と異なる答弁をしてきた。これらの責任をどのような重さにするか、慎重に検討したい」
――今回の報告は「いつ、どこで、誰が」に絞ったが、「なぜ」という点は解明できたか。
「基本的に『なぜ』という点は、土壌汚染対策法に対する対策として全面的に盛り土をする、これがまず最初です。その後でモニタリング(空間)を設けた方がいいのではないかというふうに、だんだんシフトしてくる。土壌汚染対策法への対応が『なぜ』という部分になる」
――なぜ1回目の調査は「空気のような」という漠然とした内容だったのか。(調査の中で都職員が)事実関係を隠そうとした意図は浮かび上がっていないか。
「隠そうとしたというより、現場もどうすればいいか分からなかったのではないか。2回目の調査は行政監察の手続きの中で『知っている話を述べよ』という形でより密に詰めていった。少々時間はかかったが『いつ、どこで、誰が』については、都庁職員に関しては今回の報告書で明確になった。豊洲市場問題の課題は数多いが、情報公開をベースに都民に説明していく」
――都の調査としては最終報告になるのか。
「例えば、石原慎太郎元知事には書面で回答いただいたが、『思い出せない』『記憶にない』といったほぼノー回答だった。より関係しておられた方から、どのような形でヒアリングができるか、お会いするのか書面なのか、引き続き検討したい」
――調査報告を受けて築地市場の移転の判断、またその時期・スケジュールはどうするのか。
「地下水のモニタリング調査の結果が来年1月半ばに出る。環境面での安全性の確認を引き続き行う。市場問題プロジェクトチームが食・環境・建築のそれぞれの切り口で安全性を確認する。11月12日に専門家会議を行う。安全性については専門家の評価を確認しながらということになる」
「11月7日に開場を予定していた。いつまで延期するかはいくつかのパターンがあり、現在精査している。市場関係者からは今後どうすればいいかという声が出るのは当然だ。今後のロードマップは近々報告する」