ソフトバンクやドコモ、地方で「自動運転バス」実験

2017/3/30 17:28
保存
共有
印刷
その他

ソフトバンクは30日、沖縄県で自動運転バスの試乗会を開いた。導入を見込むのは、赤字に悩む地方都市の路線バスだ。交通量が少なく、走行ルートが決まっており、乗用車よりも実現しやすいという。人口減でネットにつながる人はあまり増えないが、ネットにつながる「乗り物」のニーズはまだまだ豊富。将来性を見込んでNTTドコモも昨年末から自動運転バスの実証実験を進めるなど、通信大手の開発競争が激しくなってきた。

障害物を検知してハンドルを自動制御する(30日、沖縄県南城市)

障害物を検知してハンドルを自動制御する(30日、沖縄県南城市)

30日午前11時すぎ、20人乗りのバスが沖縄県南城市の海水浴場の駐車場を発車すると、片側1車線の公道を最高時速30キロメートルでスイスイと進んだ。アクセルとハンドル操作は自動制御。運転手はハンドルに手を触れず、ブレーキ操作だけする。

数分走ると行く手に駐車中の乗用車が見えてきた。運転手がウインカーを出すと、バスは自動で対向車線にはみ出てよける。仮設の停留所が迫ると、ぴったりと横付け。縁石と車体の距離はわずか6センチメートルほどだった。

バスはソフトバンク子会社のSBドライブ(東京・港)と自動運転ベンチャーの先進モビリティ(東京・目黒)が運用。2社のコンソーシアムが内閣府の受託事業として、実証実験した。

バスは日野自動車製の市販モデルに、障害物や道路の白線を認識するカメラと衝突回避用のレーダー、ハンドルとアクセルの制御装置が取り付けてある。あらゆるモノがネットにつながるIoTの技術も活用。あらかじめ指定した走行軌跡に沿って高精度な全地球測位システム(GPS)を活用しながら進む。

路上駐車する車を検知し、よけて走った(30日、沖縄県南城市)

路上駐車する車を検知し、よけて走った(30日、沖縄県南城市)

利用を見込んでいるのは地方都市の路線バスだ。決まった道を走るため、乗用車よりも自動運転の難易度が低いという。NTTドコモも2016年末、ディー・エヌ・エー(DeNA)と福岡市にある九州大学の構内で自動運転バスの実証実験を始めている。

日本では大都市を除くと約9割のバス会社が赤字とされる。路線バスは「運営費の6~7割を人件費が占める」(SBドライブの佐治友基社長)。バス会社は人口が少なくなり、乗客が少なくなると運行本数を減らす。すると一段と不便になって、利用客の足が遠のき、さらに乗客が減る。

公共交通機関が使いづらくなり、過疎化も進む――。そんな悪循環を断つことができると期待が集まる。ソフトバンクとドコモはそれぞれ2018年度後半の実用化をめざす。「便利な交通の仕組みを実現して社会的な課題を解決したい」。ドコモの吉沢和弘社長は意気込む。

もちろん、社会的な意義だけで乗り出しているわけではない。通信大手を突き動かすのは主力の携帯電話事業の伸び悩み。ソフトバンクグループの孫正義社長は「IoT時代は人の(接続)数を増やすのはなかなか大変だが、ネットにつながるモノは増える」と話す。

この「モノ」の本命が自動車やバスなどの乗り物だ。エンジンをはじめとする各機関の稼働状況や車外の障害物の様子と、情報収集のため大量の通信需要が見込める。店の監視カメラや工場のセンサーなど止まった物体と違って動き回るため、高度な技術も求められる。携帯大手が強みを発揮しやすい分野だ。

20年にも実用化される次世代高速通信の「5G」を使うと、死角から飛び出してくる人や車の情報を瞬時に受信して対応するなど、安全性を一段と引き上げられる可能性がある。

自動運転は自動車メーカーも力を入れるが、バスであれば住み分けがしやすい。技術開発で自動車大手と手を組む機会が生まれることも考えられる。

課題は価格だ。ソフトバンクは市販の車両を自動運転に対応させる改造費を将来、1千万~1500万円ほどに抑えたいとする。といっても、バス会社にとって初期投資がかさむ。

乗客と歩行者の安全確保はもちろん必要。「急停止します」などリアルタイムの案内や遠隔監視による車内のトラブル対策、支払い手段の確保なども備えないと、普及にはつながりにくい。実現に向けて、乗り越えるべきことも多い。

(大和田尚孝)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]