異形の技術者集団、苦節12年 衣類折りたたみ機発売へ

2017/5/30 18:08
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2015年に開かれた家電見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン」で話題を呼んだ「全自動衣類折りたたみ機」が家庭に届く。開発元のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(東京・港、阪根信一社長)が30日、17年度中に出荷を始めると発表した。開発に着手してから12年。ようやく日の目を見た新製品は白物家電市場に新風を吹き込むだろうか。

衣類を自動で折りたたむ「ランドロイド」を紹介するセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの阪根社長(30日、都内)

衣類を自動で折りたたむ「ランドロイド」を紹介するセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの阪根社長(30日、都内)

「12年の歳月を費やして世界初の技術を開発した。17年にいよいよ『ランドロイド』のある生活が始まる」。30日に都内で開いた発表会で、セブン・ドリーマーズの阪根社長は語った。衣類折りたたみ機、ランドロイドは同日に限定予約の受け付けを始め、一般からの受注は9月下旬をメドに開始する。価格は未定だが185万円程度の見通しという。

■「生活を豊かに」「技術ハードルは高く」

セブン・ドリーマーズは阪根社長の実父が設立した樹脂メーカーが母体となり、11年に米国法人として発足した。現在の体制になったのは14年だ。「世の中にないモノを創り出す技術集団」を自称しており、これまでに睡眠中の気道を確保する鼻孔挿入デバイスやカーボン製のゴルフシャフトを発売した。一見、脈絡のない製品を手掛ける技術者集団だ。

樹脂メーカーの経営を引き継いで3年目となる05年、阪根社長は「30年に売上高3500億円、経常利益率20%」という目標を掲げる。このメーカーはレーザープリンターのトナーを定着させるローラーに使う素材などで事業を拡大していたが、従来の延長線上では目標達成は難しいと判断。個人向けの最終製品に照準を当てた。

この際に掲げた事業化の基準が「人々の生活を豊かにすること」「世の中にない技術であること」「技術的なハードルが高いこと」の3つだったという。条件に当てはまる製品のひとつとしてたどり着いたのが衣類折りたたみ機で、05年に樹脂メーカーの片隅でひっそりと開発を始めた。

■ロボティクス、AIを駆使

洗濯、乾燥した洗濯物を折り畳む――。手間がかかる家事のひとつであることには間違いないが、決して難易度は高くない。だが、これを機械で代替するには高度な技術を必要とする。洗濯物が何であるかを理解する画像解析や実際に「手」となって動くロボティクスなどの技術が要り、さらに基盤となるのは人工知能(AI)だ。

衣類にはズボン、シャツ、靴下といった具合に多くの種類があり、時間の経過とともに伸縮したり色落ちしたりする。機械が「認知」「判断」「行動」する対象は無数にあるといえる。産業用ロボットを手掛けるメーカーの間でも「ゴムや布のような伸縮する素材は扱いづらい」というのが常識だ。12人のチームは約10年の歳月を費やして基礎的な技術を開発した。

量産化に際しては資金や生産設備、販売ルートが必要になる。15年になるとベンチャーキャピタル(VC)などから15億円の資金を調達し、パナソニック大和ハウス工業との提携を決めている。16年春には両社と共同出資で、量産に向けた新会社、セブン・ドリーマーズ・ランドロイド(東京・港)も設立した。

最終的な製品のスペックは未定だが、大型の冷蔵庫ほどの大きさだ。機構の見直しなどにより、15年に公開した製品よりも小さくした。冷蔵庫でいうと野菜室などが位置する下段にある箱に衣類をまとめて入れると、上段で折りたたみ、中段の箱にしまう。あらかじめスマートフォンのアプリを通じて登録しておくと、家族ごとに衣類を分けることもできる。

■折りたたみ機を軸に広がる生態系

30日には家電ベンチャーのCerevo(東京・文京)や、会費制で衣料品貸し出しサービスを提供するエアークローゼット(同・港)との協業も発表した。Cerevoが開発した音声操作に対応した卓上家電でランドロイドを操作できるようにする。ランドロイドが衣料品の利用状況を把握できる特長を生かし、好みに応じた衣料品を貸し出すといったサービスも提供する。

実用化に向けた体制が整いつつあるが、課題もある。1号機の価格は185万円程度と高価で、当面の購入層は「新しい物好き」の富裕層に限られるだろう。畳むのにかかる時間も改善の余地がある。現時点では1枚あたり5~12分かかり、「寝る前に入れておけば、翌朝にできあがっている」というあたりが限界だ。

だが、こうした課題は重々承知といった様子で、1号機を発売した先のロードマップも着々と描いている。提携先である大和ハウスはグループを通じて有料老人ホームなどを運営しており、こうした施設での活用を見込む。人手不足への対応という大きな課題があり、省人化への期待は大きい。

住宅向けでは大和ハウスが高級賃貸マンションなどへの据え付けを見込むほか、パナソニックとは家庭向けの低価格化に挑む。中期的な目標について阪根社長は「洗濯、乾燥、折りたたみのオールインワンで30万円。実現までに10年はかけられない」と明かす。衣類折りたたみ機の普及という新たな目標に向け、異形の技術者集団の挑戦は続く。

(編集委員 奥平和行)

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