ウーバー、不安抱え再出発 創業者と株主の対立残る

2017/8/28 23:15
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【シリコンバレー=兼松雄一郎】創業者の辞任で空席になっていた米ライドシェア(相乗り)最大手、ウーバーテクノロジーズの新しい最高経営責任者(CEO)がようやく決まった。複数の名前が挙がっては消えた選考レースは決着したが、新トップは創業者と大株主の激しい対立など混乱を抱えたまま船出を強いられる。ベンチャーの雄は迷走から抜け出せるか。

27日の取締役会で新CEOに選ばれたのは、旅行サイト世界最大手、エクスペディアの現役CEO、ダラ・コスロシャヒ氏(48)だ。2005年からエクスペディアを率い、同社のグローバル展開を進めた人物だ。

旅行業界では民泊世界最大手のエアビーアンドビーなどが台頭する。厳しい事業環境の中で、コスロシャヒ氏は同業や民泊仲介サイトなどの買収を実行。在任中に株価を一時、7倍以上にした手腕で知られる。

イラン革命の混乱を避けて家族が米国に移住したイラン系米国人で、トランプ政権の移民政策への激しい批判でも知られる。政権と対立するニューヨーク・タイムズの社外取締役も務めており、政権と比較的、近かったトラビス・カラニック前CEOの時代とは企業イメージも変わりそうだ。

ただ、6月にカラニック氏がCEOを辞任して以後、後任候補に挙がっていたのはコスロシャヒ氏ではなかった。

ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト前CEO、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のメグ・ホイットマンCEO、アマゾン・ドット・コムのクラウド部門のアンディ・ジャシーCEO――。コスロシャヒ氏より知名度の高い名前が次々と出てきた。

それでも「大穴」だったコスロシャヒ氏が選ばれた背景にあるのは、世間を騒がせてきたウーバーの経営の混乱だ。

大株主の米ベンチャーキャピタル、ベンチマークキャピタルは創業者のカラニック氏と激しく対立する。セクハラの黙殺に端を発した経営問題の責任を追及し、カラニック氏をCEOから辞任させた。さらに不正行為で提訴し取締役からも追い出そうとしている。

カラニック氏は徹底抗戦の構えを示し、両者の感情的な対立はもはや修復不可能な状態だ。8人で構成される取締役会はベンチマーク派とカラニック派に二分され、新CEO選びは権力闘争の格好の舞台になった。

ベンチマーク派が担いだのは女性経営者のホイットマン氏だった。セクハラ問題で悪化したイメージを回復し、カラニック時代からの決別を強く印象づける狙いだ。

取締役の中心人物の一人であるハフポスト創業者、アリアナ・ハフィントン氏も女性経営者の登用には前向きだった。ただ同氏はカラニック氏とも関係が近く、すんなりホイットマン氏では決まらない。

一方、カラニック氏は自らの権限を残せる体制を考え、後見役的なCEOとしてイメルト氏を推した。ホイットマン氏に対抗できる大物経営者だ。だが、他の共同創業者や創業期からの社員らがカラニック氏から距離を置き始め、支持は広がらなかった。

分裂した取締役会では、なかなか結論が出ない。両派の激しい綱引きが続く中、投資家の間で評価が高いコスロシャヒ氏の名前が浮上した。最終的に派閥争いから遠く、中立的なコスロシャヒ氏で落ち着いた。

経営の混乱とは裏腹に、世界中で利用者を伸ばすウーバーの事業にはますます関心が高まる。配車アプリで移動したい人と稼ぎたい人をつなぐシェアビジネスの成長の余地は大きい。他社や投資家の注目度も高く、海外でライドシェア事業への投資を進めるソフトバンクグループも資本参加を狙っているもようだ。

だが新体制の経営基盤が固まるまでは、簡単に手を出せそうにない。ウーバーは将来的に新規株式公開(IPO)も視野に入れる。ネットベンチャーの成長を軌道に乗せたコスロシャヒ氏のもとで上場に向けた準備を進める方針だが、まずは社内の対立構造を解消しないと前に進めない。

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