出光、創業家が合併反対 昭和シェルと「社風違う」
石油元売り国内2位である出光興産の創業家は28日、同社が2017年4月に予定する同5位昭和シェル石油との合併に反対を表明した。企業文化や事業戦略に大きな違いがあり、合併しても相乗効果が得られないとしている。創業家は議決権ベースでの出光株保有について、株主総会で合併などの特別決議に拒否権を行使できる33.92%であると主張。この影響力が低下することへの懸念も背景にあるようだ。合併計画は不透明となり、国内エネルギー業界に大きな影響を与える可能性が出てきた。

創業家の代理人は28日、出光の株主総会で、10人の全ての取締役の再任案に反対するかたちで態度表明した。創業家は全取締役が合併を推進しているとした。取締役の再任は賛成多数で可決された。
創業者の故・出光佐三氏の長男で出光社長も務めた昭介氏のほか、創業家の企業で出光筆頭株主である日章興産など、創業家は33.92%の議決権を持つとしている。創業家は両社の具体的な違いとして、出光には労働組合がないが昭シェルにはある、出光はイランと親密だが、昭シェルにはサウジアラビア国営のサウジアラムコが出資している、などを挙げている。
両社は15年7月、経営統合することで合意。統合形態は継続協議としたが、同11月に「合併」で合意したと発表していた。創業家には企業文化や事業戦略のほかに、保有する出光株が希薄化してしまうことへの懸念があるとみられる。このため、出光幹部と創業家は11月以降、話し合いを続けたが、折り合いがつかなかったという。
創業家は同12月から数回にわたり、合併に反対する意見書を提出したが、出光側から明確な回答がなかったため、株主総会での議案に反対する形で意見を表明した。
両社の合併については現在、公正取引委員会が審査している。早ければ9月中にもまず出光が英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから昭シェル株約33%を取得。その後、16年末にも臨時株主総会を開き、17年4月に両社の株式を交換する形で合併する方針だった。
人口減や省エネ推進を背景に国内石油市場が縮小するなか、元売り各社は有力な打開策として再編を加速させている。17年4月に出光・昭シェル、JXホールディングス(HD)と東燃ゼネラル石油がそれぞれ合併する予定になっている。JXHDと東燃ゼネはガソリンの販売シェアで50%を超えるだけに、出光と昭シェルの合併交渉が白紙になれば業界の再編全体への影響も懸念される。
今年に入り、企業の重要案件に創業家がからむケースが相次いでいる。特に大型再編について、株主総会日に反対を表明するのは異例。株主との関係など、改めて企業のあり方が問われることになりそうだ。