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温泉プールで育つフグ 養殖技術にアジア各国が注目

2014/10/5 2:00
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JR宇都宮駅から車で3時間ほどの那珂川町にある民間のスイミングスクール。いま屋内の25メートルプールで泳ぐのは1万匹のトラフグだ。夢創造(栃木県那珂川町)の野口勝明社長が海のない栃木県で養殖業に挑んでいる。

民間のプールが養殖場

民間のプールが養殖場

「うちのは天然物よりもうまいよ」。野口社長の説明は自信満々だ。

養殖に使う水は、実は地元から湧き出る有害物質を含まない温泉水。ナトリウムなどを使い、塩分の濃度を海水よりも低い0.9%に調整している。塩分を低めにすることで、フグが体内の塩分濃度を維持するのに使うエネルギーを節約できるという。成長を早めて養殖から出荷までの時間を短縮。野口社長によれば、稚魚から成魚になるまで約1年と通常よりも8カ月ほど成長が早いという。

おいしさの最大の秘訣は出荷直前の「シメ」だ。出荷直前の12時間だけ塩分濃度が海水と同じ3.5%の水に泳がせ、うまみ成分になるアミノ酸の含有量が最も多くなるタイミングで出荷する。

野口社長は水質など環境調査を実施するコンサルタント会社の出身。地元の資源を使った町おこしが養殖業を始めた目的だった。水質調査や微妙な温度調節の技を養殖に生かせないか、東大教授らと共同で研究を進め、試行錯誤を繰り返してきたという。

現在は県内外の飲食店や小売店など130店舗に「養殖フグ」を卸す。養殖技術を全国の約10企業に貸し出すなどフランチャイズ化も進め全国展開を加速する方針だ。

最近では海のない土地でも養殖ができると、将来の食糧不足に危機感を持つアジア新興国からも視察に訪れる。中国やシンガポールなど5カ国程度の視察団を受け入れている。「温泉フグ」が世界で食べられる日が来るのもそう遠くないのかもしれない。

(経済部 中村亮)

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