電通、労働時間2割減へ 正式裁判控え計画

2017/7/27 20:58
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電通は27日、労働環境改善に向けた基本計画を発表した。2019年度までに総労働時間を14年度比で2割削減し残業をほぼゼロにすることなどが柱。15年の新入社員の過労自殺を受け、東京地検が労働基準法違反で起訴、今月には異例の正式裁判となることが決まった。日本企業の働き方改革の議論としても注目されるなか、率先して働き方を見直すことで信頼回復を急ぐ。

同日開いた記者会見で山本敏博社長は「時間短縮と業務品質向上の両立を簡単ではないが必ずなし遂げる」と労働時間短縮などを達成すると明言した。

従業員1人あたりの年間総労働時間は14年度に2252時間あったが、19年度に厚生労働省のガイドラインに合わせた1800時間まで削減する。人員増強や業務の削減、ロボットによる業務自動化、IT(情報技術)投資などによって4~6%ずつ削減する計画だ。

電通は正社員の中途採用を50人、契約・派遣社員の採用を224人決めている。新入社員を含めると17年度の正社員採用は年250人と16年度の1.5倍となる見通し。資料作成など300工程、月5万8000時間分の業務を12月末までに自動化する。19年には2500工程まで拡大する。

労働時間の2割削減にともなって、休暇を連続で取得する日数を増やすほか、週休3日制の導入も検討する。

過重労働問題では16年9月に新入社員の過労自殺が労災認定され、厚労省東京労働局などが10月に立ち入り調査。12月に法人としての電通と当時の上司が書類送検されたことを受け、石井直前社長が辞任した。

1月に就任した山本社長は働き方改革を最優先課題として、午後10時消灯や有給休暇の義務化などを取り入れてきた。基本計画は当初4月までに策定するとしてきたが、「様々な業務の仕組みやインフラを一つ一つひもとく」(山本社長)必要があり時間がかかった。

書類送検や起訴を受けて、省庁や地方自治体が電通の入札への参加を停止する動きが広がっている。ただ海外事業は堅調で、業績への影響も「いまのところそれほど重大ではない」(山本社長)という。

一方で労働基準法違反は東京簡裁が12日、正式裁判を開かずに書面審理で刑を科す略式命令は「不相当」と判断した。今後、山本社長が出廷し公開の法廷で審理されることになり、信頼回復は簡単ではない。

電通事件は日本企業の働き方改革の議論にも大きな影響を与えた。経営者の長時間労働への意識が高まり、勤務終了から翌日の勤務開始までに一定時間を設けるインターバル制の導入なども進んでいる。

長時間労働の削減は生産性の低下や給与の減額につながる可能性もある。電通は労働時間の削減に合わせて等級や報酬、評価などの給与体系の見直しも同時に進める方針を示した。「総労働時間の2割削減はかなり思い切った改革で、ハードルも高い」(日本総合研究所の山田久チーフエコノミスト)という取り組みを電通がなし遂げられるかは、日本企業の働き方改革への試金石となりそうだ。

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