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ファナック、業績上方修正も消えない不安の芽

主要企業の2016年4~12月期決算発表が本格化し、17年3月期通期の業績見通しの上方修正が相次いでいる。今週に入って安川電機日本電産が修正を発表したのを皮切りに、26日にはファナックも業績見通しを上方修正した。トランプ米大統領の誕生をきっかけに進んだ為替の円安が企業業績に波及してきた格好だが、不安の芽も垣間見える。

為替の前提、相次ぎ見直し

ファナックが発表した17年3月期通期の連結業績見通しは純利益が前期比29%減の1133億円と、従来計画を92億円上回る内容だった。1~3月期の為替の見通しを1ドル=100円から110円に見直したほか、スマートフォン(スマホ)向けのロボドリルや工作機械の需要に回復の兆しが出てきたためだ。

安川電や日電産も円安が業績改善を後押しする。為替の前提を安川電は1ドル=105円から115円、日電産は同100円から110円へと修正。企業の為替に対する目線は100~105円前後から110~115円前後へとシフトしてきたようだ。ゴールドマン・サックス証券の推計では、東証1部の2月期・3月期決算企業の純利益の伸び率は今期、従来の会社計画の前期比5%増から、同8%増まで上振れする可能性があるという。

ただ、円安は企業業績への明るい材料となっているものの、気がかりな点も目に付く。上方修正を発表した主要企業の株が売られる展開が目立っているのだ。安川電は発表翌日の24日に一時5%安に沈み、日電産も発表当日の24日に年初来高値を付けた後は、連日で逆行安となった。相場全体が騰勢を強めているのとは裏腹に軟調な展開となっている。

トランプ政権発足、増す不透明感

背景には、日本企業の収益環境をめぐる不安がくすぶり続けていることがある。まず「米国第一」を掲げて誕生したトランプ米大統領の経済政策がどう影響するかが読みきれない。足元では円安・ドル高基調が続いているが、トランプ氏や米フォード・モーターなどの大手製造業の幹部からはドル高をけん制する発言が相次ぐ。

「国境税」などの貿易条件をめぐる政策がどこまで強行されるかも予測できない。JPモルガン証券の阪上亮太氏は自動車や機械、精密といった業種の日本企業では「『国境税調整』導入に向けての議論が本格化すれば(株価が)さらなる調整に見舞われるリスクは否定できない」と指摘する。米国では議会の承認を得なければ閣僚などの高官が就任できないため、陣容が正式に固まるにはなお時間がかかる。それまでは要人の発言に為替や株価が振り回され続ける可能性もある。

円安以外の追い風がどこまで吹くかも不透明だ。米国では製造業の景況感指数(PMI)が1月に1年9カ月ぶりの高水準を付けるなど、世界景気の回復をうかがわせる兆しはある。ファナックも26日、足元では米国や欧州などでの需要が低迷しているものの「今後はロボット需要の拡大が見込まれる」として生産能力を引き上げる計画だと説明。景気回復が収益環境の好転を加速させるとの期待は強い。

だが「それだけで企業業績の回復が持続するとみるのは時期尚早」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里氏)との見方もある。これまで上方修正を発表したのは世界景気の動向と業績が連動しやすい企業ばかりだが「電子部品や機械などの業種では受注サイクルの短期化や調達のグローバル化で以前よりも短期間の業績改善にとどまり、収益環境の回復が中長期的に続くかどうか判断しにくくなっている」(芳賀沼氏)という。

日経平均株価は26日に前日比344円(1.8%)高の1万9402円を付け、2万円の大台回復を再び射程にとらえた。だが業績を上方修正しても「噂で買って事実で売る」という売り物に押されてしまう状況は、不安をぬぐい去れない株式市場の心理を表している。

(富田美緒)

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