三菱電機、期待の星はAI 同時に話した違う内容を明瞭再現
期待の星はAI(人工知能)。三菱電機は24日、研究開発成果披露会を開いた。20の研究成果が出展されるなかで、特に注目を集めたのはAIを使った新技術だ。柵山正樹社長は「研究開発は、(経営目標の達成など)様々なハードルを超える原動力だ」として、今後も中短期から長期的な物まで幅広い視点で研究開発に取り組む方針を示した。
「芸能人のペット動画がSNSで大人気」「鎌倉花火大会が7月19日に開催予定」。2人の男女が1本のマイクの前で、同時に全く違う内容を話している。何を言っているのか分からない。しかし録音された音声を再生すると、それぞれの発言が明瞭に流れてきた。
三菱電機が世界初、独自のAI技術を用いて開発した。事前に登録されていない音声でも、男女間、同性同士、異なる言語間でも対応できる。原音再現率は3者間で80%以上、2者間では90%以上だ。
ディープラーニング(深層学習)を用いて、音声成分の特徴から話者を分類する変換処理を学習。学習した変換処理を入力音声に適用し、データの類似度に従っていくつかのグループに分ける「クラスタリング処理」で音声成分を分離、分離した音声を合成することで各話者の声を再現する。
助手席に奥さん、後ろに子供が乗っている自動車のカーナビゲーションや、不特定多数でざわつくエレベーター、会話やテレビなど他の音がある家庭内での家電製品を音声認識で操作する際や、国際会議の同時通訳で話した内容を明瞭にするといった実用化が考えられるという。
披露会ではそれ以外にも、事前学習のための試行数を大幅に削減した「スマートに学習できるAI」が登場。従来と比べ約50分の1の試行数で学習が完了するため、産業用ロボットに搭載すれば、準備の時間を減らせ、多品種少量生産に役立つ。
三菱電機は2017年度、売上高の約5%にあたる2120億円を研究開発に投じる計画。大学など外部機関との共同研究にも積極的に取り組んでいくとしている。
(増田有莉)