2019年4月24日(水)

現金化アプリCASH、再開でも残る与信への疑問

2017/8/24 16:31
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スマートフォン(スマホ)で撮影した商品を即座に査定し現金化するサービス「CASH(キャッシュ)」を運営するバンク(東京・渋谷)は24日、6月の開始直後に停止に追い込まれていたサービスを再開した。質屋や貸金業の業法を迂回する脱法行為との批判があったが、今回、15%のキャンセル料を払った利用者に商品を返す仕組みを廃止。実質的に古物商として出直すが、新サービスの「与信」に疑問も残る。

同社が当初目指したCASHの概要はこうだ。利用者はスマホでアプリを立ち上げカテゴリーを選び、売りたい商品を撮影する。最大2万円までの買い取り査定額を表示され、利用者が査定額に同意するとあらかじめ登録した口座に現金が即入金される。商品は2カ月以内に送ればよい。

この「スマホで簡単操作」と「即時」が最大のミソだ。リサイクルショップなどへ持ち込む手間が省けるだけでなく、取引が成立すれば数時間後には現金がコンビニのATMなどで手に入る。ユーザーの本人確認は電話番号のみ。与信のハードルは極端に低い。

サービス開始前から「ヤフオク!やメルカリより使い勝手が良さそう」とネット上で話題になり、6月28日のアプリ公開の日に利用者が殺到した。会社側の想定を大きく上回る7万超の商品が総額約3億6000万円で現金化されたため、翌日にはサービスを停止せざるを得なくなった。

想定の甘さに加えて、ビジネスモデルそのものにも「脱法行為ではないか」との批判がネット上では出ていた。現金化後の利用者と会社側のやり取りは2通りあり、1つは「2カ月以内に商品を送る」、もう1つは「商品を送らない代わりに入金額の15%をキャンセル料として上乗せして返金する」というものだ。

後者の仕組みが実質的な質屋営業なのではないかというネット住人の疑問に対し、同社は「15%は利息でなくあくまで機会損失のキャンセル料」と主張していた。が、疑問はサービス停止と相まって批判へと変わった。

今回、サービス再開にあたりキャンセル料の仕組みは撤廃。利用者は全員、入金後2週間以内に商品を送るよう改めた。現金化も1日の総額上限を1000万円とし、それ以上は申し込みを断って想定を超える資金流出が起きないようにした。ベンチャー法務に詳しいAZX総合法律事務所(東京・千代田)の雨宮美季弁護士は「以前は貸金業との誤解を生みかねなかった。返金制度を無くしたことで質屋や貸金との違いが明確になった」と指摘する。

ビジネスモデルの刷新で法律面と資金面のリスクは低下したが、それでも与信面での不安は残る。信用調査会社の幹部はこう指摘する。「不要な商品を現金化したいという人だけが利用するなら問題ないが、金に困った者が簡単に悪用できる仕組みである点に大きな問題がある」

例えば、偽ブランドや盗品、店頭で写真だけ撮影し利用者が持っていないモノなどの出品は防げない。質屋やリサイクルショップでは対面取引や警察への日常的な協力が違法行為の抑止力となるが、領収書や保証書の添付もない商品写真だけの審査、スマホ操作だけで成立する取引では、抑止効果は無いに等しい。

光本勇介社長は「盗品を買い取るリスクはある」とした上で「万が一の場合は古物商免許に基づき捜査などに協力する」と話す。1人当たりの現金化の上限は2万円なので、大量の盗品を現金化するといった組織的なマネーロンダリングに利用される懸念は低い。本人確認の手法として利用者の電話番号を記録しているため、ブラックリストを作成し個人の2度目の不正を防ぐことはできる。

ただ、あるクレジットカード会社の幹部によると、このブラックリストの作成が大きなリスクだという。「わずか2万円のために違法行為を走る者は主にお金に困った者だ。ヤミ金融など違法な『貧困ビジネス』を手掛ける業者にとってブラックリストはまさにお宝」

ブラックリストが流出しないように万全な情報管理システムを構築するのが「金融関連ビジネスを行う上での常識」(前述幹部)。取り扱い規模に比例して数億~数十億円の投資が必要になるという。

ベンチャー企業には手に余る内容であることから、信用調査会社などからは「ブラックリスト自体を転売するのが目的ではないか」との見立ても出ている。これに対し光本社長は「CASHはメルカリのように、あくまで商品を正当な価格で売買するためのサービス」と強く否定する。

光本社長はITベンチャーの業界では連続起業家(シリアルアントレプレナー)として知られている。2008年、個人が簡単にEC(電子商取引)サイトを開設できるサービスを提供するブラケット(東京・渋谷)を設立し、13年に衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイに事業を売却。16年にブラケットの主力事業をMBO(経営陣が参加する買収)し、ブラケット会長に就いた。17年2月には兼務しながら、バンクを設立した経緯がある。

今回のCASHについても、革新的サービスとしての飛躍を予想する声がベンチャー関連業界では大きい。期待に応えるためにも、与信面の透明性の向上が重要になってくる。

(吉田楓、石塚史人)

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