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偽造バイアグラ、ネット経由で氾濫 4割がニセモノ

インターネットの普及で偽造医薬品の摘発が相次いでいる。2015年に税関で差し止められた偽造薬はおよそ1千件と10年前の100倍に増えた。その代表格とされるのが米ファイザーの「バイアグラ」に代表される勃起障害(ED)治療薬だ。24日にED治療薬を国内販売する4社が発表した合同調査ではネット販売されるED薬の4割が偽造品だった。偽造医薬品が流入する実態の一角が明らかとなった。

ファイザー日本法人(東京・渋谷)や日本新薬などED治療薬を扱う4社が3月~8月にかけて、「バイアグラ」など国内流通する3ブランドを扱う販売サイトから薬を入手して成分を調べた。対象は国内サイトが45サンプル、日本への流入量の多いタイの販売サイトが同25サンプルだった。

調査では、入手したサンプルのうち40%が偽造品だった。国内サイト入手分では36%、タイでは48%が偽造品だった。有効成分を調べたところ、正規品の最大用量の1.5倍や全く含まれていないケース、正規品に含まれない物質が入った錠剤もあった。

日本ではED治療薬は症状の性質から医師への相談・処方を敬遠する人が多い。割安感や手軽さからネット販売に手を伸ばす人が後を絶たない。米国などでは容量が日本の上限の2倍の製品が認可されている。

昭和大学藤が丘病院泌尿器科の佐々木春明副院長は「偽造品は不整脈や下痢など健康被害を引き起こした事例も報告されている」と警告する。例えば、有効成分が正規品より多い場合は血管が開きすぎて低血圧などの症状が出るという。11年に4社がネット販売の利用者を対象に行った調査でも、ネット購入者の4割が頭痛やほてりなどの副作用と見られる症状を経験したと答えている。

偽造医薬品の問題はED治療薬だけにとどまらない。世界保健機関(WHO)は偽造医薬品の流通量は世界で650億ドル(およそ7兆3000億円)を超えたと推計する。日本でも、ネット経由で抗うつ剤や睡眠薬などの偽造薬の流入が増えているとされる。

欧米では正規ルートに偽造医薬品が混入する事例も起き、行政・製薬業界が対策の強化を進める。日本は健康保険や堅固な国内流通網の存在が偽造医薬品の流入を阻んできたが、ネット販売という新たなチャネルの登場で環境は急激に変わっている。ED治療薬の調査が示す結果は、氷山の一角にすぎない。

(山本夏樹)

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