関電と東燃ゼネ、千葉の石炭火力新設を断念
関西電力と東燃ゼネラル石油は23日、千葉県内で計画する石炭火力発電所建設を断念すると発表した。2015年夏から事業化に向けた検討を進めてきた。政府は30年のエネルギーミックス(電源構成)で石炭火力の比率を26%に設定。事業者は既存発電所の老朽化に併せて、省エネ効率の高い新型発電所を導入する計画を進めている。ただ、昨年末にパリ協定が発効すると、環境省が二酸化炭素(CO2)の排出量増加への懸念から石炭火力の事業再検討を求める動きが出ていた。
関電と東燃ゼネは15年8月に、千葉県市原市にある東燃ゼネの工場敷地内に約100万キロワットの石炭火力発電所を建設する計画を発表した。投資額は3000億円程度とみられており、コンバインドサイクルと呼ぶCO2の排出量を抑制できる最先端の設備を導入する計画だった。
今回の計画凍結について、関電は「事業の収益性について東燃ゼネとの間に相違があった」と語る。千葉県や茨城県、秋田県などで計画する他の発電所についてはひき続き取り組んでいく。東燃ゼネも静岡県で計画する液化天然ガス(LNG)火力発電所については建設を進めていく。
日本は11年の東日本大震災で原子力発電所の再稼働が遅れる中、火力への依存度が高まっていた。15年度ではLNGが44%、石炭が32%を占めていた。既存発電所の老朽化が進むなか、発電事業者は全国でLNGや石炭をつかった大型火力発電所の新設計画を進めている。
一方、国内ではパリ協定の発効後、CO2排出規制への機運も高まっていた。10日には山本公一環境相が閣議後の記者会見で、中国電力やJFEスチールなどが進める「蘇我火力発電所」(千葉市)について、事業の再検討を求める意見書を経済産業相に提出した。全国では石炭火力発電所を新設する計画が数多く残っており、今後の事業計画に影響を及ぼしそうだ。
(企業報道部 指宿伸一郎)