2019年6月26日(水)

雪国まいたけ、脱・創業家へ切り札 経営陣と銀行団
米ファンドTOBに賛同決議

2015/2/24付
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創業家の関与で経営の混乱が続いてきた雪国まいたけが、脱・創業家へ「奥の手」を繰り出した。米投資ファンドのベインキャピタルが23日、雪国まいたけの全株取得を目指し最大約88億円でTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表し、経営陣は24日未明にTOBに賛同を決めたと発表した。経営陣と取引銀行6行がファンドと水面下で進めた買収劇は、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の行方にも影響を与えそうだ。

「経営のガバナンスがガタガタで、このままでは上場廃止になる恐れがある。ファンドの資本の力で助けてほしい」。昨年12月、ある証券会社を通じ、雪国まいたけの現経営陣と取引銀行団から、ベインにTOBの要請が舞い込んだ。

雪国まいたけの創業者である大平喜信元社長は6畳一間で起業し、希少種だったマイタケの大量生産に成功した立志伝中の人物だ。強烈なリーダーシップで事業を拡大し、1990年代後半には新潟県の雪国まいたけは長野県に本拠を置くライバルのホクトと「信越キノコ戦争」と呼ばれる激しい販売合戦を繰り広げた。ただ、強引ともいえるワンマン経営は歪(ひず)みも生む。13年には内部告発で過去の不適切な会計処理が発覚した。

大平氏は責任をとって同年11月に辞任したが、大株主として経営への関与が続く。後を継いだイオン出身の星名光男社長(当時)を就任から7カ月後の株主総会で解任した。続いてホンダ出身の鈴木克郎会長兼社長がトップに就くが、大平氏の親族は3月末までに臨時株主総会の開催を計画している。創業家の意向をくむ取締役を増やして、鈴木氏らの影響力を抑える作戦だ。

経営の混乱で株価は低迷し、東京証券取引所も創業家の経営関与に懸念を強める中、鈴木会長兼社長ら現経営陣と取引銀行が「ホワイトナイト(白馬の騎士)」としてベインを招いたのが今回のTOBの真相だ。

取引銀行は創業家に融資する際、創業家の保有株に担保権を設定している。今では不良債権化した融資に対し担保権を行使して株の名義を創業家から銀行に変更する奥の手を使い、TOBの成立を後押しする。銀行団は担保権行使と名義変更を確実にするため、23日は分刻みのスケジュールを作成した。事前にリハーサルを重ねたという周到な準備に、創業家は完全に虚をつかれた。

実は、雪国まいたけはベインが潜在的な成長力の大きさに着目し、不適切な会計処理が発覚する数年前から目を付けていた買収候補だった。高齢化に伴い国内のキノコ消費が一段と拡大するとみているとともに、海外市場の開拓余地が大きいと考えているからだ。

特に魅力が大きいとみているのは中国だ。中国人のキノコの年間消費量は、日本人の3倍の約10キロに達する。会社側も現地生産に乗り出しているが、経営混乱が影響し、必ずしもうまくいっていない。あるベイン関係者は「雪国まいたけの品質で中国で大量生産が実現できれば、爆発的に成長できるはず」と話す。

11年に買収し、事業を立て直して14年に東証1部に再上場させた外食大手のすかいらーくはベインの成功体験だ。雪国まいたけも買収が成功すれば、ガバナンス改革にとどまらず、現経営陣と共同で事業を立て直し、再上場するシナリオを練っている。

雪国まいたけは23日夕方に取締役会を緊急招集し、ベインのTOBに賛同を決めた。それでも担保権の行使で株の名義を銀行に移された大平元社長ら創業家が裁判所に不服を申し立てる可能性もあり、買収劇の成否は見えていない。ある関係者は「23日には大平氏周辺に動きは見られなかった」と話している。(川崎健、水口博毅)

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