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禅譲撤回「急にさみしくなった」 ソフトバンク孫氏

ソフトバンクグループの孫正義社長(58)とニケシュ・アローラ副社長(48)は21日、日本経済新聞の取材に応じた。孫氏は社長をアローラ氏に譲ると決めていた60歳が近づくにつれて「もう少しやっていたいという欲望が出た」と打ち明けた。約1年後に60歳になればアローラ氏に禅譲するつもりだったが「急にさみしくなった」とも語った。一問一答は次の通り。

――社長を続けたいと思い直したきっかけはなんでしょうか。

孫氏「創業者は往々にしてクレージーだ。いつまでも若く、まだまだやれると思っていたい。自ら経営の一線から引退する、いざその時期が近づくと、やっぱりもう少しやっていたいという欲望が出た」

決算発表を終えて、会場を後にするソフトバンクグループの孫社長(右)とアローラ副社長(5月10日、東京都中央区)

「ニケシュには迷惑をかけた。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。でも現役を続けたい気持ちを抑えるのは正直よくないと思う。長い目で見たときに、気持ちが成熟していないのに社長を譲って後でもめるのもいやだった。正直に話した方がよいと思った」

――アローラさんに思いをいつ、どう伝えたかのでしょうか。

孫氏「この数週間のことだ。最初にニケシュをスカウトしたときは60歳ぐらいで社長を渡すつもりでいた。彼にもその前提で来てもらった。だが僕自身の中で、あと1年で60歳だと思うようになり、葛藤が出てきた。髪の毛はだいぶ減ってきたけどまだ若いぞと(笑)」

アローラ氏「マサ(孫氏)からもっと自分で頑張りたいと言われ、私も『こんなクレージーな天才を放っておくわけにはいかない』と思った。今後は顧問としてサポートを続けたい」

――アローラさんの適性を疑問視する書簡を受け取り、調査委員会を設けて調査してきた件とは関係ありませんか。

孫氏「ない。(書簡は)全くいわれのない内容ばかりだった」

――アローラ氏が保有するソフトバンク株はどうしますか。

アローラ氏「今日現在のマーケット価格でマサに売却することで合意した」

――アローラさんは海外事業を統括してきました。後任は誰が担うのですか。

孫氏「ニケシュに代わる強いリーダーはなかなかいない。ただ(取締役の)ロナルド・フィッシャーは長く米国での投資経験とマネジメント経験がある。ニケシュがスカウトしてきた有能な人材もいる。あとは僕自身が社長として、米携帯子会社のスプリントを含め海外事業に継続的に取り組む」

「国内事業を統括する宮内(謙・取締役)が22日付で代表取締役副社長に就く。海外の投資活動などのマネジメントは複数の人が分担し、海外事業の責任者は僕が担う」

――アローラさんはこの2年間を振り返り、もっと違うことができたと思うことがありますか。

アローラ氏「この2年間、(ソフトバンクグループで)貴重な経験ができた。日本の文化についても学べた。お金のためではなく知的好奇心のため、人のために働いてきた。正しい決断をしてきたと誇りに思っている」

「マサはビジネスの天才だ。類いまれなビジョンを持ち技術のパラダイムシフトを見抜く。私は退任後、余裕ができたら時間とお金を新しい挑戦に使いたい」

――今後、社長を次の人に譲る予定はありますか。

孫氏「少なくとも5~10年は社長として走りたい。健康である限り、2~3年で降りるつもりはない」

――60代で後継者に引き継ぐと19歳の時に決めた孫さんの「人生計画」の見直しは。

孫氏「見直しはない。60代で(引き継ぐ)というのは変わらない。69歳まであるから今後、10年は社長をやると言っている。ただ今回のことでよく分かったのは、69歳になっても結構アクティブに続けているんじゃないかという気はする」

「インターネットは若い業界だ。僕自身が会社の成長のボトルネックになってはならないと思った。若いうちにバトンを渡す必要があると思っていた。これは2年前のことだ。ただあと1年で60歳という年齢になって急にさみしくなった」

アローラ氏「私はマサの人生計画を共有させてもらっていた。50代で事業を完成させると聞いた。そのあとは我々の相性や私の能力をふまえ、後継者の候補者として考えてもらいたいと思っていた」

孫氏「彼ほどの人材が見つかったから、60歳になったらすぐにでも(引退できる)と自分でも納得していた。そういう気持ちがなければ、世界一の米グーグルで活躍している彼に来てもらって申し訳ないと思った」

――将来、後継者を再び社外からスカウトする考えはありますか。

孫氏「いまはまだ考えていない。社長にずっと集中する気持ちに戻っている。後継者のことは今、頭の中にない」

――アローラさんがソフトバンクで働いたのは2年足らずですが、孫さんはどう評価しますか。

孫氏「僕は中国・アリババ集団への投資などうまくリターンを得ることができたものがあるが、失敗もたくさんある。今までは趣味のような投資をしてきた。だがニケシュはプロフェッショナルな分析や資産査定、交渉、投資後の継続的なマネジメントを持ち込んでくれた。ソフトバンクの社内にはなかった構造的な仕組みだ」

アローラ副社長(左)は孫社長が三顧の礼で引き抜いた後継者だったが…(15年10月)

「ニケシュが来てから彼を尊敬する米シリコンバレーの有能な人材が集まり、今までソフトバンクが30年かけてもできなかったレベルの高い組織づくりができた。さすがニケシュだと思う」

「僕は投資した株を抱えていたい気持ちが強く、売るのが苦手だった。売らなければならない状況に追い込まれて売ることはあったが、伸び盛りで高い評価を得ている時に売るのが一番だ。資産を現金化する大切さを学んだ。(アリババ株の売却などで)約2兆円の現金を1カ月で手にする。今までの日本のビジネス史上、例がないと思う」

――アリババ株などをさらに売る計画は。

孫氏「当分はない。今回、これだけの規模(の売却)で苦労したから」

――ゲーム子会社のフィンランドのスーパーセルを7700億円で中国・騰訊控股(テンセント)に売却することで合意しました。またゲームに投資する考えはありますか。

孫氏「当面はない。ソフトバンクの過去の投資パターンをみてもらうと分かると思うが、パラダイムシフトの入り口で投資している。例えば、ゲームの中心がパソコンからスマートフォン(スマホ)に移りスマホゲームの時代がくると読んで(スーパーセルに)投資をした」

――引退を撤回した孫さんの次の野望はなんですか。また、そのためにアリババ株の売却などで得る2兆円の使い道は。

孫氏「とりあえずは(資金に)余裕があることが重要だ。次の大いなる投資の機会に恵まれれば、そのときに機動的に動けるポジションをつくっておくことが大事だ」

「情報革命をさらに続けてどんどんドライブしていきたい。もしかしたら、またクレージーな投資や事業を興すことが今後もあるかもしれない」

――具体的に検討している買収案はありますか。

孫氏「今はない。常に色々と狙ってはいるが。NTTドコモを買おうかとか(笑)。あり得ないでしょうけど」

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